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2015年12月02日06:39

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老害

 「豊かな老人のせいで自分たちが不幸なのだ」と老人を敵視する若い人たちが忘れている大切なことがあります。もしも「老人から取り上げる」政策が実行されたとしても、「取り上げられたもの」が若い人の所に届けられるという保証はないのです。その両者をセットで要求して実現させないかぎり。それとも「自分が困っている」ことをお上の人たちはきちんと知っていてなんとかしようとしてくれている、という信頼感を持っている、ということなんでしょうか。お上って、そこまで信頼できるんです? だったらなぜこんなに不幸な人が多いのでしょう?

【ただいま読書中】『老後はなぜ悲劇なのか? ──アメリカの老人たちの生活』ロバート・バトラー 著、 グレッグ・中村文子 訳、 内薗耕二 監訳、 メジカルフレンド社、1991年、4466円(税別)
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 原著は1975年に出版されました。少子高齢化とか年金問題などまだ影も形もなかった時代の話です(私の記憶では、高度成長がオイルショックをがつんと食らわされ、安定的な成長にシフトして、のちのバブルに向かった時代)。そういえば「恍惚の人」で認知症(当時の言い方で「もうろく」「惚け」)が日本で広く認知されたのは72年ですが、そのときは「社会問題」ではなくて「個人の問題」という捉え方でしたっけ。だけど「老化」は「誰かの問題」ではなくて「自分の問題」でもあります。そして、そういった人たちが集団として存在するのは「社会の問題」として解決を試みる必要があります。あるはずです。
 「老人」に限らず「社会の問題」になるものでは、様々な仮説や固定観念がまかり通ります。しかしそれらの中で実証済みのものは実はほとんどありません。精神科医としての20年の経験から著者は「老人は思考が遅い」「独創性を欠く」「成長しない」「仕事はできない」「保守的」「病気がち」「無気力」「家族や社会の重荷」といった“通説”は(一片の真実を含んではいますが)「希望的観測と正真正銘の恐怖の混合物」と表現します。そしてその根底には「老化は死の前段階。自分の死からは目をそらしたい」が潜んでいる、と。著者は「暦年齢」さえ「作り話」と言っています(「若い80歳」もいれば「老けた80歳」もいるから)。そしてそういった様々の作り話の結果が「老人差別(ageism:68年に著者が作った言葉)」です。
 「事実」を著者は列挙します。65歳以上の81%は自立歩行が可能で、施設に入っているのは5%。69年に65歳以上の貧困生活者は480万人(前年より20万人増加。他の年齢層では前年より120万人減少)。
年金制度には多くの問題があることが冷静に(冷徹に)指摘されます。公的年金と私的年金の両方に。それでもあるだけまだマシなのですが、十分ではない(老人の貧困層を増やしている)ことが問題なのです。
 仕事、住居、栄養、医療、交通……著者は「作り話」を「事実」で検証していきます。本書を読んでいると、この世がいかに思い込みや作り話で作られているか、がわかる気がします。それと、「高齢社会に関する現在の日本の問題」がほとんどすべて網羅されてここに提示されている、ということに私は驚きます。これだけわかっていて、日本の厚生省は何か有効な政策をとれなかったのか、と。社会の中で不当に扱われ辛い思いをする集団が存在しているのは、悲劇です。そして、そういったことに対して何かする力を持っているのに平気で看過する政府を持つのも、悲劇です。
 ところで皆さんは「老人」にどんなイメージを持っています? そして、そのイメージの根拠を説明できます? 実際に日常的にどのくらいの数の老人とどのくらいの深さで付き合っています?


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