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2015年11月02日05:59

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人材

 日本のお上が理想とする人材は、まず「ノーベル賞授賞をする人」ついで「稼いで税金を文句を言わずに納めてくれる人」かな。で、そういった能がない人間は兵士にしたいのかしら。おっと、兵隊は生産も納税もしませんね。投票はするでしょうが。

【ただいま読書中】『地球の中心までトンネルを掘る』ケヴィン・ウィルソン 著、 芹澤恵 訳、 東京創元社、2015年、1800円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4488016588/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4488016588&linkCode=as2&tag=m0kada-22
 目次:「替え玉」「発火点」「今は亡き姉ハンドブック:繊細な少年のための手引き」「ツルの舞う家」「モータルコンバット」「地球の中心までトンネルを掘る」「弾丸マクシミリアン」「女子合唱部の指揮者を愛人にした男の物語(もしくは歯の生えた赤ん坊の)」「ゴー・ファイト・ウィン」「あれやこれや博物館」「ワースト・ケース・シナリオ株式会社」

 最初に登場する56歳の女性はハケン社員です。仕事内容は「祖母」。幼い「孫」たちに「祖母体験」をさせるのが仕事です。もちろん「子」は彼女が自分の母親ではないことを承知しています(安くないお金を払って依頼してきた“顧客”ですから)。しかし「孫」たちはそんなことは知りません。かくして「理想の家族」が現出します。
 いやもう「理想の家族」を実現するために悪戦苦闘している人たちがこの作品を読んだら、怒り狂うかもしれません。ただ、著者の態度はちっとも冷笑的ではありません。むしろ、なんとか救いを探そうとしているようにもみえます。「困ったなあ、世界がこんなことになっていると、気がついちゃったよ」とつぶやきながら。
 千羽鶴も意外な扱われ方をしています。日本ではもちろん病気の回復や平和を祈る“真面目なもの”ですが、ここでは……いや、この奇妙な(でもある意味現実的な)世界は、実際に読んでもらうのが一番でしょう。これまた、千羽鶴に異常な肩入れをしている人は怒り狂うかもしれません。著者は決して千羽鶴を馬鹿にしているわけではないのですが。
 もしかしたら本書を読んで、どこで怒りを覚えるかで読者が現実にどのようなファンタジーを振りかけて認識しているのかが判定できるのかもしれない、なんて過激なことを思いましたが、「地球の中心までトンネルを掘る」で私のそういった思いは錯覚か、とも思います。だって「地球の中心までトンネルを掘る」ことに何らかの思い入れを持っている人はあまりいそうにありませんから。映画「卒業」のように、大学を卒業したけれどすることが見つけられずにいる3人組が、裏庭に穴を掘り始めます。ただし地球の中心は目指しません。ある程度掘ったところで横に掘り進めます。そして……
 読み進めるうちに、本書に登場する人たちは「人生に何かが欠落している人」というか「人生に何かが欠落していると思っている人」たちであるように思えてきました。だからでしょうね。どんなにけったいな状況でどんなにヘンテコな行動をしていても、なんとなく自分とつながっているような感覚が生じるのは。「自分の人生はフルに満たされている」と思って満足している人は、それほどいないでしょう? だったら多くの人は本書を読んである程度イライラする感じと共に、作中人物たちに対して何らかの共感を得ることができるはずです。


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