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2015年10月23日18:09

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一億総活躍

 皆さん、すでに活躍していますよ。貧乏暇無し、とも言いますが。

【ただいま読書中】『目ざめへの旅 ──エドガー・スノー自伝』E・スノー 著、 松岡洋子 訳、 筑摩書房、1988年、2200円
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 22歳の若者の貧乏旅行としてたまたま上海を訪れた著者は、6週間の予定の滞在がどんどん延びてしまいました。雑誌出版の手伝いをして訪れた中国西北地方で、500万人以上の餓死者を出した大飢饉を目撃。それが著者を“覚醒”させます。都市に集まる難民、増える売春婦、道ばたに転がる死体、食料として樹皮をはぎ取られて枯れた木々、絶望の中死んでいく貧農とますます肥え太る豪農の対比……著者は(というか、当時の考える頭を持っていた若者たちは)あまりに大きすぎる悲劇を前に考え始めます。
 私にとって意外だったのは、当時の中国在住の欧米人にとって、蒋介石は共産主義者扱いだったことです。清朝に対する「革命」を起したからでしょうか。それとも蒋介石自身に対する無関心さの現れ? 国民党にも共産主義者がいましたから、もしかしたら初めのうちは国民党と共産党にはそこまで大きな違いはなかったのかもしれません。
 著者は、インドではガンジーやネルー、中国では宋慶齢(孫文夫人)などのビッグネームにインタビューしています。1932年1月28日第一次上海事変。この時著者はまさに戦闘が開始された現場にいました。路地を這って共同租界に逃げ込み、著者は最初の目撃者として記事を送ります。しかし職を失った著者は、中国と日本の関係を的確に分析した記事を買われ、「サタデー・イブニング・ポスト」誌などに高額で記事が売れるようになります。「エドガー・スノー」が誕生したのです。
 著者は、国府(国民党政府)・共産党・日本軍、それぞれの支配地域が実際にどうなのか、強く興味を持ちます。特に共産党支配地域に(当時共産党系の武装ゲリラは「赤匪」と蔑称されていました。ただの山賊扱いです)。コネを使い、著者は紅区に“密入国”します。そこで出会ったのが、周恩来、そして、毛沢東。蒋介石は周恩来には8万ドル、毛沢東には25万ドルの懸賞金をかけていました。合計33万ドルに著者は続けてインタビューしたわけです。長い質問リストを見て毛沢東は「自分の半生記を書くのはどうか」と提案します。それだったらすべての質問に答えることになるし、毛沢東の主張も盛り込めますから。4箇月間紅軍と行動を共にし、著者は中国共産党に強い印象を受けます。そして、著者の筆を通して、中国共産党の政策や主張(たとえば「内戦よりも抗日が優先」)が「中国」と「日本」に伝えられることになりました。これは一大センセーションでした。そして著者は『中国の赤い星』をせっせと執筆します(この本が欧米でベストセラーになったことに著者は驚いています。欧米は中国のことには無関心だ、と思っていたので)。日本軍は北京に迫ってきます。著者の家は、日本軍のブラックリストに載った人たちの避難所になります。それらの人をすべて脱出させ、最後に著者も北京を脱出。しかし中国にはとどまり、記事を書き続けます。そこで見たのは「奇妙な戦争」でした。日本軍は戦闘に勝ち続けています。しかし中国は「降伏」をしません。戦闘には勝っても日本は戦争には負けていたのです。ロシアでのナポレオンを著者は思います。著者の歴史の“読み方”は確かです。著者に読めなかったのは、自身の本国、アメリカの出方でした。
 41年に帰国。離婚。再婚。冷戦下の世界。著者の人生は、公私ともに多忙です。すばらしい見解もあれば間違いもあります。だけど、常に歴史の“現場”に立っていた人の貴重な証言が本書には満ちています。


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