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2015年10月15日06:45

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ただほど高いものはない

 送料ゼロ円とかスマイルゼロ円って、結局誰が儲けているんです?

【ただいま読書中】『内乱のなかの貴族 ──南北朝と「園太暦」の世界』林屋辰三郎 著、 吉川弘文館、2015年、2200円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4642065903/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4642065903&link_code=as3&tag=m0kada-22
 「内乱の時代」は「新しい秩序が建設される時代」でもある、と著者は考えています。そこで、日本で有名な内乱時代「南北朝」に焦点を絞り、そこに生きた貴族とその日記を題材に「時代」を語ります。
 「承久の乱」(後鳥羽上皇のもとで企てられた鎌倉幕府打倒運動。結果は朝廷側の惨敗)の後、統幕計画に反対していた西園寺公経は急速に権勢を得ます。京都と鎌倉の間の連絡を取り、さらに大覚寺・持明院両皇統の対立が始まるとその間にも入って斡旋をするようになります。公経の長子実氏の孫実兼の時代には西園寺家の権力は京鎌倉を圧倒するばかりでした。洞院家は、公経の三男実雄を始祖とし、分家としては小倉家や正親町家があり、本家からも大臣を輩出し、両皇統に娘を送り込む名門でした。本書で扱われる洞院公賢(とういんきんかた)が政治の世界にデビューしたのは20歳、花園天皇の時でした。そして後醍醐天皇への譲位。しかし幕府と朝廷の協約では後醍醐は“つなぎ”で、彼の子孫には天皇になる目はありませんでした。あるとしたら、倒幕による協約破棄です。執権高時は田楽と闘犬に耽溺し、失政によって窮乏する御家人の心は幕府から離れつつありました。武家による公家への干渉を廃する(ついでに自分の直系を皇統とする)には機が熟していました。
 建武の新政、新政の失敗、室町幕府……右大臣まで昇った公賢は引退し幕府から冷遇されますが、そこに政界復帰を命じる院宣が。左大臣に任ぜられたのです。ここから日記「園太暦」が再開します。
 律令制度が崩壊した状況で、公家が頼るべきは「先例」でした。そのため(公賢のような)「先例に詳しい博識の人」は朝廷では貴重でした。そしてそういった人が頼りにしたのが公的な記録とともに私的な「(自分または他人の)日記」でした。他人の日記も借りて読んでいたそうです。
 室町時代に入り、朝廷の機能はほぼ停止していました。幕府の圧力にも南都北嶺からの要求にも逆らえないのです。経済基盤は失われ、独自の動きはできません。公家の生活も窮乏します。さらに、南北朝の内乱が京都に不安を与え続けます。群盗が横行し、放火殺人襲撃などが続き、世情は不安定となります。政局もそれに倣ったかのように不安定です。吉野が落ち、高師直は殺され、尊氏と直義は講和します。そういった戦乱の世界で、公賢は無力感と生活の窮乏からでしょう、何度も辞表を提出しています。また、京都が乱れたため、屋敷に警備のための木戸を設けました。用心深い性格のようです。
 南北朝の講和に関して「園太暦」には、南朝方の北畠親房は強硬に反対するが、楠正儀が和睦に賛成していることが記述されています。親房はわかりますが、正儀の行動は不思議です。これは「武家同士」のつながりで理解するべきなのかもしれません。また、和解したはずの尊氏と直義の間がぎくしゃくしているらしいことも公賢は日記に記しています。自分や朝廷の身の安全に直結することですから、注意深く眺めていたのでしょう。そしてついに直義は北に脱出。尊氏は南北に敵を持つことになってしまいました。尊氏は南朝と和睦しようとしますが、不調。それは直義との関係にも当然影響を与え、京はまた不穏となります。しかしついに南朝との講和が成立。北朝方の公家は冷遇されることが予想されましたが、南朝とも縁戚関係がある公賢は、一統された朝廷でまた重職に任命されてしまいます。しかし、朝廷の至る所で、新旧交代はおこなわれていました。政変により「時代」は変革されたのです。
 公家は没落し、当時都で流行した猿楽狂言で「公家人疲労のこと」を題材として諷刺されるようになっていました。公賢も日記でまともな食事が摂れなくなったことを嘆いています。公家官僚の代わりに日本を牛耳ることになったのは武家ですが、その中でも守護大名の鼻息が荒いことが目立ちます。南北朝の対立も、守護大名から見たら自分の勢力拡大のための一つの方便だったのかもしれません。そして、その中から足利義満を支えることになる実務管理能力を持つ「武家貴族」が育っていきます。その寿命は「次の内乱」までではあるのですが。


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