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2015年10月13日06:34

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丁寧な説明

 「続ける」と言っていました。で、実際に現在も繰り返し継続されています?

【ただいま読書中】『真夜中の北京』ポール・フレンチ 著、 篠山裕子 訳、 エンジン・ルーム/河出書房新社、2015年、1700円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4309920616/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4309920616&link_code=as3&tag=m0kada-22
 1937年、北京は静かでした。日本軍が着々と迫っていて陥落は目前。あるいはその前に国民党政府の蒋介石が日本と協定を結んで北京を差し出すのではないか、という噂もありました。1月8日の寒い朝、狐狸塔の下で若い英国人女性の死体が発見されます。何回も刺され衣服は引きちぎられているというひどい状態で。さらに、胸から心臓が摘出されているのをみつけた警察官は、お互いの顔を見合わせます。女性はまず撲殺され、死後に血抜きをされてから右腕を切断、さらに体内の臓器を抜き取られていたのです。しかしあたりに血痕はほとんどありません。どこかで殺されてから運搬されているのです。どこで? 誰が?
 殺されたのは、天津の寄宿学校からクリスマス休暇で北京に帰っていたパメラ・ワーナー。父は元領事で現在は探検や調査をしている有力者です。日本軍が迫っている状況下、英国と中国の政治的な関係も警察に影響を与えます。ハン警視正は、英国のお目付役デニス主任警部とともに、手がかりを追います。
 パメラの人物像は矛盾していました。平凡な外見の女子学生なのに、多くの男が夢中になる。学校では問題児なのに社交界では人気者。さらに頑固な父親もわけありです。
 このパメラ殺しは、エドガー・スノーの伝記にも出てくる事件だそうです。著者は当時の記録を集め、さらに当時の関係者が得られなかった詳細な情報を得て、事件を再現しようとしています。遠い過去に起きた異国の殺人事件、として忘れ去るのではなく、「実際に何があったのか」に迫ろうとします。
 「忘れられる」どころか、薄汚い隠蔽工作も本書には登場します。「威信」を守るためなら少女の一人や二人が性的虐待を受けようと殺されようと気にしない人々の行動には、むかつきます。そういった人たちが、自分の家族の女性が同じ目に遭ったとしても同じ主張をするのなら、そういった人でなしなんだね、と思うしかないのですが。
 結局公式には未解決の殺人事件ということになりますが、警察にヘレン・スノー(エドガー・スノーの妻)がやって来ます。あの殺人は、夫が現在執筆中の『中国の赤い星』の内容を知ってそれが気に入らない人たちが、警告のために自分を殺そうとして間違えて同じ金髪女性を殺してしまったのだ、と。実際にヘレンもパメラと同じルートを夜間に一人で移動することがあったのです。確かにあり得る仮説です。しかし、仮説に過ぎません。
 そして、7月7日盧溝橋。7月29日に日本軍は北京を掌握しました。外国人租界は“離れ小島”となります。北京の外では「三光作戦」が吹き荒れます。パメラ・ワーナー殺人事件は吹き飛ばされました。翌年の新年では、爆竹が禁止されました。音が銃声と似ているからです。
 しかし、パメラの父は事件を忘れませんでした。残りの人生を、事件の個人的捜査に捧げることを決心します。それは、北京の地下社会の奥深くに潜入することでした。そこから浮かび上がってきたのは、腐臭が漂うストーリーでした。
 実はこの「ストーリー」も、真実である保証はありません。身元を不明にするために死体を損壊したにしても、内臓を抜く意味がよくわかりませんし、警察がことの最初から捜査に熱意を持っていなかった理由もよくわかりません。結局「未解決」なのですが、パメラの死は、当時の中国そのものの「死」を象徴するものだったのかもしれません。ひどい話ですが。


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