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2015年10月12日06:59

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のど元過ぎればすぐ忘れる

 昨年「デング熱」で日本は大騒ぎとなりました。公園を閉鎖したり蚊の調査をしたりしたことを覚えている人はまだ多いでしょう。だけど、今年の夏は“静か”でしたねえ。もう終わったみたいに無関心です。
 ところで「国際社会」では、デング熱なんか目じゃないくらい恐い熱帯病が山ほど存在しています。だけど日本社会はそういったことにもまったく無関心。「デング熱に狂騒」と「(昨年へと国際社会へとの)二つの無関心」の落差の大きさに、私は一種の不安感を感じてしまいます。

【ただいま読書中】『顧みられない熱帯病 ──グローバルヘルスへの挑戦』ピーター・J・ホッテズ 著、 北潔 監訳、 B・T・スプリングスビー/鹿角契 訳、 東京大学出版会、2015年、4200円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4130604120/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4130604120&link_code=as3&tag=m0kada-22
 先進国が無関心な「熱帯病」としては、寄生虫感染症(回虫症、住血吸虫症、フィラリア症、エキノコックス症など)・原虫感染症(リーシュマニア、シャーガス病、睡眠病)・細菌感染症(トラコーマ、ハンセン病など)・ウイルス感染症(デング熱、狂犬病)があります。感染者数はおそらく10億人以上、あるいは20億人以上。コレラの病気は、健康を障害するだけではなくて、貧困の原因ともなっています。さらに重要なのは、これらの病気に対して何らかの対策が打てるのに打たれていない(患者数の把握さえされていない)ことです。「顧みられない(neglected)」なのです。
 本書で最初に紹介されるのは、回虫です。私は小学生の時にマッチ箱に便を入れて検査に出した世代ですので、回虫そのものには馴染みがあります。しかし、まったく無対策無治療だと、人々が本当に悲惨なことになるとは知りませんでした。子供たちは体力が落ち学業が遅れ、結局貧困が再生産されていきます。
 フィラリアに関して、宇宙論のホーキング博士と毛沢東の間に意外な繋がりがあることが紹介されます。ホーキング博士の父親は寄生虫病研究者でフィラリア治療に公衆衛生的な新しい方法を提案し、それを毛沢東が採用した、という緣です。そう言えば今年ノーベル賞を受賞した大村智さんが開発したのもフィラリアに有効な薬でしたね。
 ジェフリー・サックスによると、アフリカ全体でマラリアと顧みられない熱帯病対策に支出されるのは年に30億ドル。これはペンタゴンの支出の2日分。「顧みられない熱帯病」と言う場合、「主語=顧みないでいる人」は誰なのか、という問いも同時に立てることができそうです。対策に動くグローバルネットワークはすでにいくつも稼働しています。しかし、対象とする病気や活動する地域が、バラバラだったり無駄に重複していたり…… この辺にもう少し工夫が必要そうです。新しい治療薬の開発も必要です。そしてそれは「貧困に対するワクチン」になるかもしれません。


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