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2015年10月09日06:52

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コミュニケーション障害宣言

 政治家はよく「粛々と……」と言います。これに対して「上から目線の発言」だという評価が有名になりました。たしかにそういった面もありますが、私は「コミュ障宣言』の面もあるだろうと感じています。「他人が何を言おうが、もう決めたんだから、一切何も変えずにこれまでの既定路線通りに“粛々と”やっていく。誰の言うことも聞くもんか」という頑なな意思の表明ですから。おっと、政治家が体現する「コミュ障のあかし」は「粛々と」だけではありませんでしたね。

【ただいま読書中】『南総里見八犬伝(上)』曲亭馬琴 著、 白井喬二 訳、 河出文庫、2004年、1200円(税別)
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 八犬伝と言って私がすぐ思い出すのは、NHKの人形劇です。で、原作をきちんと読んだことがなかったので、読んでみることにしました。軟弱者なので、現代文に翻訳されたものを選択します。
 六代将軍足利義教と関東管領足利持氏の戦いで、里見家は持氏方につき、当主季基(すえもと)は討ち死にします。お家再興のため御曹子の義実(よしざね)は安房に逃れます。安房の国主長狭介光弘は側女の玉梓に骨抜きとされ、国は乱れてます。光弘から国と玉梓を奪った定包を里見義実は殺し、淫婦玉梓も殺しますが、そこで玉梓の呪いが。
 さて、義実の長女伏姫は愛犬八房とともにすくすくと育ちます。しかし隣国の敵に城が囲まれ、落城間近に。義実は半ば戯れに「娘をやるから敵将の首を取ってこい」と八房に命じます。すると八房はその命令を果たしてしまいます。伏姫は泣く泣く八房と山に。不思議なことに、肉体的接触はなかったのに懐妊。伏姫は自ら腹を裂きますが、中からは不思議な8つの光の球が飛び出して遠くに飛び散っていきます。ドラゴンボールより一つ多いんですね。
 しかし、命が軽い物語です。本当にシンプルな理由で、人は殺され、自害します。物語が進行するにつれて死体の山が築かれます。現代社会で、小銭を奪うために殺す、という行為を平気でする人間がいますが、それと良い勝負の行為が頻出します。著者は江戸時代後期の人で、戦国の気風よりは泰平の世の中になじんでいたはずですが、それでも人命が軽い世の中だった、ということなのでしょう。あるいは、自分は今は町人だがもともとは武士の出だ、と主張したかったのかな?
 さて、やっと「八犬士の物語」が始まりました。いやもう、ここまででも結構堪能できたのですが。最初に登場するのは、犬塚信乃。女性の名前ですが、当然それには(長い長い)いわれがあります。文字が浮き出る玉と牡丹の形のアザ。それによって信乃は自分に何らかの使命があることを悟り、さらに仲間がいることも知ります。さあ、クエストの旅の始まりです。しかし牡丹ではなくボール型のアザだったら、アストロ球団なんですが。
 一人、また一人と犬士が見つかりますが、なかなか「全員集合」とはなりません。そして、やはりばたばたと人死にが出ます。悪党は無理難題や陰謀に夢中です。ただ、「またいつもの悪党の仕業か」と思わせておいて、実は「義」に基づく行動だった、というドンデンも混じっているので、読者は油断ができません。
 そして、ついに犬士たちが集団行動を始めます。まずはとらわれの身となって日夜拷問を受けていた犬川を三犬士が悪人どもをばったばったと切り伏せて救い出します。これまで隠忍自重の日々を過ごしていた江戸時代の読者は、「痛快!」と叫んだことでしょう。
 ストーリーの盛り上げ方も見事ですが、新しい犬士が見つかるたびに簡単にこれまでのダイジェストを語るのも、長い物語で読者が“迷子”になるのを防ぐために有効なテクニックだったでしょう。新人に「あなたはこれこれしかじかの犬士なのだ」と教えなければならない、という必然性もありますし。日本中を犬士たちは巡り、6人、7人とその存在が明らかになってきます。
 というところで、上巻はおしまい。


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