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2015年10月08日06:48

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実は手軽ではない手軽な食事

 インスタントとかレトルト食品は非常に手軽ですが、“それ”を生産するためには工場などで相当手がかかっています。しかも大量生産するものは売れ残ったら困るから大量販売するために宣伝や流通にも工夫が必要です。実はちっとも「手軽」ではなかったようです。

【ただいま読書中】『サンドイッチの歴史』ビー・ウィルソン 著、 月谷真紀 訳、 原書房、2015年、2000円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4562051698/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4562051698&link_code=as3&tag=m0kada-22
 そもそも「サンドイッチ」に「定義」があるのでしょうか? 本書はそこから始まります。そして、必須の要素として「パン」「具」「具がパンに挟まれていること」が挙げられます。つまりオープンサンドイッチは「サンドイッチ」ではないとされ、レタスにチーズが挟まれている「ダイエットサンド」も除外されます。もっともこの定義に従うと「パンのサンドイッチ(バタつきパンでトーストを挟んだもの)」は“セーフ”になるのですが(この「パンのサンドイッチ」は実在するそうです)。
 サンドイッチの「発明」は、第4代サンドイッチ伯爵ジョン・モンタギューの“功績”というのが通説です。しかし「パンに冷肉をはさんだ軽食」は、ずっと前からあったはず(そういえばサンドイッチ伯爵の1762年にはまだフォークが一般的ではなかった時代。「サンドイッチ」は手を汚さずに肉を食べる手段としては誰でもおこなっていたはずです)。さらに「賭博に夢中で」と通説ではなっていますが、当時モンタギューは貧乏貴族でしかも大臣として海軍本部での仕事が無茶苦茶忙しかった時期です。ただ、「軽食」片手に仕事に精勤している姿が評判となり、友人たちが「サンドイッチ伯爵と同じものを」と注文していたのが短縮されて「サンドイッチ」になった、という可能性はあります。ここで重要なのは、伯爵がコックに「注文」をして持ってこさせたことでしょう。その行為によって「サンドイッチ」は(テーブル上で自分が製作する)私的なものではなくて「社会的な存在」になったのです。
 下層階級のサンドイッチは、大口を開けてかぶりつく「食事」でした。しかし中流〜上流階級では、できるだけ薄く切ったパンに薄い肉などをはさんで一口で優美に食べる軽食でした。サンドイッチにも階級差があったのです。男女差もありました。アフタヌーンティーのサンドイッチは余暇に食べる女性らしい習慣ですが、サンドイッチバーは長時間労働をする男たちを対象としていました。サンドイッチはパンの製法にも影響を与えました。パンはより柔らかく軽く直線的な形になり、ついでに栄養価が低下していきました。1851年には「サンドイッチ用パン」が販売されています。
 サンドイッチと相性が良い場所として、本書では鉄道や劇場が挙げられています。さらにスポーツ(観客、選手)、そしてもちろん、ピクニック。正式の食卓がないところで食事を摂ろうとしたら、サンドイッチは非常に有力な選択肢でした。
 アメリカではサンドイッチは(イギリスとは)別の進化をしました。クラブサンドイッチ・BLTサンドイッチなど「名前」がつけられ、さらに巨大化への道を歩み始めたのです。さらに、パンに挟まれる具は、保守的なイギリスと違ってアメリカでは自由自在です。さらにパンの種類や味付けなどを「個人仕様」にしてくれます。注文してから出てくるまでけっこう時間がかかることがあるので、あまりファーストではないフードのようです。
 世界各国には、それぞれユニークなサンドイッチがあります。著者は、日本の総菜パンもサンドイッチの一種として紹介しています。たしかにあれをサンドイッチとしてみたら、ユニークさに頭がくらくらするかもしれません。なぜかここに、本書の冒頭で拒絶されていたオープンサンドイッチも登場しています。紹介されている中では、インドのカレートースト・サンドイッチがとても美味そうに私には見えました。


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