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2015年08月11日06:55

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日本の民営化

 日本政府は様々な組織を次々民営化していますが、その内警察や消防も民営化する気でしょうか? おっと、その前に「年金はアテにならないから、保険会社の個人年金で運用しよう」という形で「年金」を民営化に持っていこうとしていますね。そうそう、警察は「警備はセコムに任せよう」という形で少し“民営化”が始まっていますし、消防も地域の消防団員が減少している困った困った、とアピールする形でもっと民間に下請けできないかどうか思案中のようでした。
 そういえば“先進国”のアメリカでは軍事も民間軍事会社という傭兵に下請けに出していますから、日本でもそのうち自衛隊を民営化するか傭兵に下請けに出すことになるかも知れません。

【ただいま読書中】『広告を着た野球選手 ──史上最弱ライオン軍の最強宣伝作戦』山極康之 著、 河出書房新社、2015年、1800円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4309275745/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4309275745&link_code=as3&tag=m0kada-22
 読売新聞社の正力松太郎は日本に「職業野球」を作ろうとあちこちにチーム結成の声をかけました。その中の一人、新愛知新聞の田中斉は正力に対抗して新チームだけではなくてもう一つのリーグを作ろうと画策します。しかし知識も資金も足りず、結局名古屋軍と大東京軍を率いて新しいリーグに参加しました。ところが大東京軍があまりに弱小。球団はさっさと行き詰まってしまいます。
 商売を何度も失敗して自殺まで考えることがあった小林富治郎は、ライオン歯磨きを成功させます。街中での楽隊・相撲・映画・講演会などで活発な宣伝と啓蒙活動(「口の中を清潔に」「寝る前に歯磨きを」など)を行っていましたが、新しく効果的な宣伝活動を求めていました。
 この大東京軍と小林商店が出会い、昭和12年に「ライオン軍」が誕生します。ライオンズでなくてライオンなのは「ライオン歯磨き」だから。スポンサーが費用を持つ地方巡業、歯磨き愛用者招待試合、球場での宣伝活動など当時としては斬新な宣伝を行うことで「ライオン軍」には人気が出ます。弱くてもファンはつくのです、というか、弱くて負けるほど人気が出ました。当時職業野球は六大学よりも一段格下扱いでしたが、職業野球全体の人気も出始めます。しかし戦争の影が野球にも忍び寄っていました。選手や職員から召集されて出征する者が出始めたのです。さらにオーナーが球団経営を放り出して売り飛ばし、本拠地が大阪に移転。それでも「ライオン軍」の宣伝戦略の派手さと選手層の薄さは変わりません。
 現在の日本プロ野球では日本ハムの大谷の「二刀流」が評判になっていますが、戦前の職業野球では(ライオン軍になる前の)大東京のボンナとか讀賣ジャイアンツの川上とか、投打の主軸を一人で兼ねる選手はそれほど珍しくなかったようです。高校野球なら「エースで4番」はまだいますから、昔の職業野球は今の高校野球の発想と近いところで動いていたのかも知れません。
 昭和14年のシーズン開幕では、後楽園球場のスコアボードにでかでかと「ライオン歯磨」と入れることに成功。これは本当にでかい広告効果です。昭和15年(紀元二千六百年)に満州リーグ(満州での巡業)と「日本語化」の運動が始まり、タイガースは阪神・イーグルスは黒鷲・セネタースは翼……スタルヒンも須田博に改名させられます。困ったのは「ライオン軍」。朝日軍に改名しますが、これではライオン歯磨きとの縁が切れてしまいます。しかし“レジスタンス”が。表だっての宣伝は不可とされましたが、招待券の裏に「ライオン歯磨」の文字を印刷する、という手を使ったのです。これは昭和18年のリーグ戦までは続けられていて、軍に密告する人はいなかったようです。そして小林商店は戦争中も軍の指導に逆らって「ライオン歯磨き」を「日本語化」しませんでした。配給制度となって「宣伝」が無意味となった昭和20年はじめにも「ライオン歯磨き」の宣伝を行っています。根性がある歯磨きです。
 戦後すぐに「職業野球」は復活し(そのことについては今年6月21日に読書した『昭和20年11月23日のプレイボール』(鈴木明)に詳しく書いてありましたっけ)、敗戦翌年リーグ戦が再開。後楽園のスコアボードにも「ライオン歯磨」が復活します(それまでは「進め一億火の玉だ」でした)。ただ「ライオン軍」は復活しませんでした。
 「ライオン軍」はわずか3年半の寿命でした。しかし球団と小林商店とが合作で作り上げ周囲に示し続けた、単なる儲け主義を超越した野球に取り組む姿勢は、おそらく今でも日本のプロ野球の中に生き続けているはずです。


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