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2015年07月01日07:11

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被災者を助ける被災者

 2012年2月20日にここに『石巻赤十字病院の100日間』の読書記録を書きました。あの本で印象的だったのは、「地震と津波に襲われた大変さ」だけではなくて、「病院」が「救援の拠点」であると同時に「被災者」でもあることでした。被災者が被災者のために必死で働いていたのです。それも「病院」としてだけではなくて「避難所」として、さらには救援対策本部としても。これはあまりに多くの望みすぎだと私は思います。無理をさせすぎでしょう。次の大震災ではその「無理」を少しでも減らす(あらかじめ準備をしておく)ことが、結局被災地域の回復には効果的だと私は思っています。

【ただいま読書中】『災害に強い病院であるために』福島幾夫・池内淳子・鵜飼卓 編、医薬ジャーナル社、2014年、4800円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4753227111/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4753227111&link_code=as3&tag=m0kada-22
 1995年の兵庫県南部地震では、神戸市内の1419医療帰還中、全焼・全壊した病院は10・診療所は279、半焼・半壊は病院が19・診療所が260。亡くなった医師会員は7人だったそうです。そこに許容量の数倍の患者が殺到しました。
 停電・断水・通信途絶も病院を襲います。もちろん自家発電用の燃料は備蓄されていますが、それが切れたらどこから配達してもらえます? 過負荷で機械が壊れたら修理の人はどこから?
 神戸の場合は、病院が優先的な電力復旧の対象となり、72時間以内には電気が使えるようになったそうです。すると、自家発電の燃料備蓄は72時間分あればなんとかなりそうです。ただし、東南海トラフ地震のように広範囲に被害が及ぶ場合にはもっと長い停電時間を想定しておく必要があるかもしれません。医薬品の流通も問題となります。おそらく物資の流れ自体はわりと早く確保できるでしょう。問題は「現場のニーズ」と「供給」とのミスマッチです(神戸でもそれが問題になっています。医薬品ではありませんが、東日本大震災でボランティアに行った人から聞いた話では、救援物資と現場のニーズとがみごとに乖離していたそうです)。さらに「出勤できる人」の確保。病院は建物が壊れず物資が備蓄してあれば機能するもの、ではありませんから。
 神戸ではクラッシュ症候群が目立ちましたが、2004年新潟県中越地震ではいわゆるエコノミークラス症候群が注目されました。そして2011年東日本大震災。ここで目立つのは津波被害です。宮城県の海辺の鉄筋3階建ての病院が屋上まで水没し、入院患者47名全員と職員24人が死亡、なんて記述を読むと辛くなります。入院患者はほとんど寝たきりで、地震発生から津波襲来まで40分だったそうですが、もしその場に自分がいたら何ができるでしょう?
 東北大学病院では、患者1000名に対して3日分の食料備蓄があったそうです。しかも、エレベーターが使えなくなることを想定して各階の病棟ごとに非常食を置いてあったそうです。おお、さすが、と言いたくなりますが、職員2500人分の食料が準備されていなかった、と聞くと「職員は救助しながら自分の食糧確保を自力でするか、飲まず食わず寝ずで働くことを期待されているのか」とも言いたくなります。実際に体験しないとわからないことって、いくらでもあるんですね。非常食を提供する場合に「食品への配慮」は当然必要ですが、もう一つ「患者へのメッセージ」も東北大学病院では重視していました。院内だけではなくて病院の周囲まで含めて現状と将来の見込みを食事に添えたメッセージに書き、希望が持てるようにしてあったのです。ありがたいことに支援物資がどんどん届いたそうですが、それを受け入れ整理し分配するための人手が足りませんでした。こういった「想定外の事態」にいかに柔軟に対応できるか、が「人間の優れた能力」なのでしょうね。
 「災害に強い病院」でまず重要なのは「立地」だという指摘があります。これまで病院建設でそういった視点から論じられることはなかったように思いますが、たとえば氾濫しやすい川縁なんて、いくら建物が頑丈でも周辺の道路が水没したらもう使い物にはならないわけです。そういったことも考えておく必要はありそうです、というか、そういったことを考えずに建築された病院(やその他の建物)について、今からどんな手が打てるのかも“想定”しておく必要があるでしょう。しないでおいて後になって「想定外だった」というのは、現時点ですでに「怠慢」と呼べそうです。


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