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2015年05月27日06:45

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大きな差

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【ただいま読書中】『山岳遭難の教訓 ──実例に学ぶ生還の条件』羽根田治 著、 山と渓谷社(ヤマケイ新書)、2015年、800円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4635510018/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4635510018&link_code=as3&tag=m0kada-22
 最初のエピソードは、著者自身の遭難ギリギリの体験です。一泊二日で西表島を縦断するという、(著者の予想では)お気楽なトレッキングが、実は死の一歩手前まで著者を追い詰める体験となったのです。いや、「遭難」は、いつどこで起きるかわからない、ということが実によくわかります。後知恵で批判するのは簡単ですが、たとえベテランであっても“初めての状況”では素人と立場は同じなのです。
 それがよくわかるのが2006年の八ヶ岳・谷川岳での「ベテランたちの遭難」です。爆弾低気圧によって急速に悪化した天候により「ベテラン」が何人も遭難死をしてしまいました。
 ただ、個人としては「初めて」でも、歴史に学べばそれは「初めて」ではなくなることがけっこうあります。たとえば1989年立山三山での遭難事故(10人遭難8人死亡)のときの天気図は、低気圧と台風の違いはありますが、10月の西高東低の冬型、と、2006年のときとそっくりでした。
 そういえば昨冬には山スキーでの遭難が何例か報道されましたが、その走りと言えそうな2006年の事例が本書にはあります。これも「歴史」として学べば今年の事故は予防できたかもしれません。このとき16人のグループのほとんどが雪崩に巻き込まれてしまったのですが、かろうじて埋もれずにすんだ人がシャベルを持っていなかったために手で掘り出すことになってしまいました。ところが近くにいて救助に駆けつけたオーストラリアのツアー客一行は、全員がビーコン・シャベル・プローブの「雪崩救助セット」を装備していてそれを活用しています。さらに、雪に埋もれた人たちはほとんどが部分的な埋没だったのですが、唯一完全埋没した人がふだんから「自分はビーコンを持たない」主義だったため、捜索に手間取ることになりました。悪天候下で救助隊も危険にさらされる時間が長くなったわけです。「雪崩に遭わないように気をつければ、そんな装備は不要だ」と「何があるかわからないから準備をしておく。無駄になったらそれはそれでOK」の差はなぜ生まれるのでしょうねえ。準備と覚悟に国際的な差があるのでしょうか? 
 マスコミ報道をあまり軽々しく信じない方が良い事例も紹介されます。「全員軽装だった」と大きく報道された遭難で、実はみなしっかりと装備をしていた、という例が紹介されています。これは「ゴールデンウィークに遭難するとは、きっと山を甘く見て夏山装備で登ったに違いない」という思い込みからマスコミが事実を確認せずに書いたのかもしれません(どんな思い込みを持っていたのか私も確認はしていませんが、少なくともマスコミは事実を確認はしていなかったわけです)。私の商売の領域でもよくマスコミは大嘘を書きますから、驚きはしません。
 遭難は一例一例が“ユニーク”です。登る人はそれぞれ違うし、山もその日の天気もすべて違う。だけど「すべて違う」で思考停止をしていたら、同様の遭難はこれからも繰り返し続けることになります。だったら、個人を責めてそれでオシマイにするのではなくて、そこから「教訓」を得るべきだ、というのが著者の発想です。QCや航空機事故調査ではおなじみの発想ですね。
 これは気の毒、としか言いようのない事故もあります。山中で至近距離に落雷。九死に一生を得ますが、下山途中に足が滑って転落し左足首を骨折(本人は自分の不注意を責めていますが、私は落雷のショックも影響していたと考えます)。夏山のシーズンなのに運悪くその日に限って登山者が全然いない。携帯は圏外。これ、私だったらどうするでしょう。この人はテーピングをして自力で下りていますが、私だったらテープだけではなくて短い枝などを副木として足首に添えるでしょうね。新聞紙があったらそれを筒状にきつく丸めたのでもけっこう使えます。これ、覚えておくと役に立つことがあるかもしれません。役に立つことがあるような状況にならないのが良いのですが、“想定外”で起きるのが事故ですから、知識は持っておいた方が良いでしょう。


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