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2015年05月26日20:08

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「鰐の聖域」

読書日記
「鰐の聖域」 
中上健次
 作

未完結遺作。和歌山県新宮市の被差別部落出身の若者。大して働かないくせに女だけには不自由しないろくでなしの主人公。渓流に潜ってヤスで鮎を突くのが楽しみ。普段は目的もなく車を乗り回したり、女の尻を追いかけたり、喫茶店でだべったりしている。たまにガソリンスタンドで働いたりする。
周りいるのは「路地」とよばれる部落出身の男達。限られたパイを奪い合う土建屋グループを軸に、その女達。金融屋と暴走族上がりの社員達。などなど。

予想どおり非常に泥臭い中上作品。代表作を読んでいれば被差別部落と近代化の問題や、日本人の土着的な生き様など思い至るであろうが、この作品のみに限って言えば、主人公その他まったくリアルに地方に屯するヤンキー的な人達の風情で、文学的な内省や風景描写もなく、まさにヤンキーな日常そのまま。

これは偏見を持って言うが、都会の上流階級で育ちインテリジェンスを身につけた知的な人々から見れば魅力的などろどろした下層の地方生活者、あたかも面白い物語の設定のように感じるこれらの風情も、少しでも身近にそれを知る地方出身者にしてみれば、すぐにでも逃げ出したい堪え難いシロモノで、このヤンキーな人達がずっと同じ力関係で近くにいるからもう地元には絶対帰らないという地方出身者も多いらしい?(仄聞)
この後が書き継がれていればいよいよ本質に迫ったかもしれないが、ここまではあまりにリアルなヤンキーの日常で、どうしても嫌悪感を持ってしまう。まあ主要作品を読んでから言えという話かもしれません。
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