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2015年05月20日06:28

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1万円札が入る場所

 お店によっては万札で支払うと「1万円、入りま〜す」と店員が大きな声を出すところがあります。これは「レジに万札が入った」情報を店内で共有しているのか、あるいは「レジに入れました。自分のポケットには入れていません」と宣言しているのか、事情はわかりませんが、どちらにしても客から見たら「そこまで大声で店内のすべての人間に知らせなければならないことか?」なんてことを感じます。私には無関係な店の事情なのに、一番近くにいる私が「この人が万札を出したよ」と大声をアナウンスされるのですから。
 これが「一万円お預かりします」と少し大きめの声で言う、のだったら、これは「私」も“参加”しているわけで、少しの大声くらいになんの問題も感じないのですが。

【ただいま読書中】『木でできた海』ジョナサン・キャロル 著、 市田泉 訳、 創元推理文庫、2009年、1100円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4488547133/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4488547133&link_code=as3&tag=m0kada-22
 若い頃にはワルで鳴らしたが、今は故郷のクレインズ・ヴューで警察署長をしているフラニー・マケイヴが本書の語り手です。近所で鼻つまみのお騒がせ夫妻が不可解な失踪を遂げます。後に残されたのは爽やかな香りと不思議な鳥の羽。警察に持ち込まれた三本脚の犬が、すぐに死んでしまいます。フラニーは鳥の羽と一緒に森に埋葬してやります。しかしすぐに犬の死体は戻ってきます。鳥の羽と、爽やかな匂いと一緒に。フラニーはそれをまた埋葬します。
 そしてフラニーは、高校時代の自分や家の周りの「猫のおりたたみ」の訪問を受けます。そしてこんどは、鳥の羽だけが戻ってきます。フラニーが高校時代に使っていたロッカーを現在使っている女子生徒の死体と一緒に。これは何かのメッセージ? そうだとして、それは誰から、誰への、どんな内容で何の目的のためのメッセージ?
 フラニーはこんどは未来に飛ばされます。自分が死ぬ1週間前のウィーンへ。
 思春期と中年と老年を強制的に同時に味わわされるのは、一種の拷問でしょう。おかげでフラニーは、謎解きの探偵としてはきわめて間抜けな行動を続けてしまいます。無理もないですけどね。30年後の新世界は衝撃ですが、それにプラスしてあまりにプライベートな衝撃が連続するものですから、じっくりものを考える暇がないのです。さらに時空間はパッチワークのような、混沌のような様相を呈します。その中でフラニーは、様々な年代の「自分自身」とも出会うことになります。
 まったく、1ページどころか一行後に何が起きるのかまったく予想できない小説です。読み終えた後も、自分が本当にこの作品を読み終えたのかどうか、自信がありません。だけど、不思議でとても面白い小説です。


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