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2015年05月16日06:18

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目立たない目

 馬の顔を横から見るとつぶらな瞳が目立ちますが、正面から見ると目はあまり目立ちません。逆に言えば、馬にとって「正面」は「両眼の視界の端が重なり合った部分」でしかないと言えそうです。捕食動物を警戒したり逃げるときには、周囲を万遍なく見る必要があるから、合理的な配置とは言えるのでしょうが、本を読むときには不便そうです。

【ただいま読書中】『ペンギンはなぜ飛ばないのか? ──海を選んだ鳥たちの姿』綿貫豊 著、 恒星社厚生閣、2013年、2600円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4769914644/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4769914644&link_code=as3&tag=m0kada-22
 「海鳥」は「ペンギン目」「ミズナギドリ目」「ペリカン目」「チドリ目」の4つの目から成ります。“住み処”は海ですが、子育ては陸で行います。カモメやアホウドリの飛行速度はふつう時速40〜70km、泳ぐ速度はペンギンが時速7〜8km、ウは時速6kmくらいです(人間の100m自由形の世界記録は時速7.7km)。
 アホウドリの飛行テクニック「ダイナミックソアリング」は非常に面白いものです。海面近くと海面から20mくらい上空とで風速に大きな差があることを利用して、体の向きを変えることで上昇と下降を繰り返し、羽ばたかずにジグザグ飛行をずっと繰り返すことができるのです。ものすごい省エネ飛行です。陸上とは違って強い上昇気流が得られませんから、トビやグライダーとは違ったテクニックを開発したわけですが、どうやってこんなものを身につけたのか、不思議です。
 ペンギンは空は飛びませんが、水中を“飛び”ます。そのときの羽ばたき回数は、1秒間に3〜4回。鳥として標準的なオオセグロカモメ(体重1kg)が空中を飛ぶときの羽ばたきも、1秒間に3〜4回です。興味深い一致ですが、水と空気の密度が違うから羽根の大きさと形はずいぶん違っています。ところで、水中も空中も“飛ぶ”ハシブトウミガラスは、空中ではオオセグロカモメより速く羽ばたき水中では羽を畳んでペンギンより遅く羽ばたく、という、それぞれの“専門家”よりも効率の悪い“飛び方”をしています。同じ翼で違う環境に対応するために、犠牲を払っている、ということです。
 鳥は羽毛に空気を含んでいますが、ウミウの羽毛は濡れやすくなっています。速く空気を追い出して浮力をなくすことで潜りやすくなっているわけ。鳥の体の浮力がどのくらいかは、水面に浮いている鳥の体がどのくらい見えるかから推定できるそうです。
 鳥が潜水をするのは生活のためです。したがって、1回の潜水で全エネルギーを使い切ったりはしません。そんなことをしたら、浮上したときに天敵に出会ったとしても、逃げることができませんから。常に次の行動のために余力を残しておく必要があります。すると海中では体内の酸素を節約するために“省エネモード”に入る必要があります。体温を下げて代謝を落とすのです。キングペンギンは潜水を繰り返すと深部体温がどんどん下がりますし、カモでは脳の温度さえ下がるそうです。人間でも素潜りの競技者がトレーニングをすると、100mの深度で心拍数を1分に20回にまで落とすことができるそうです。
 鳥なのに潜り専門で飛ばないことにどんな意味があるのか、と思えますが、たとえば「羽根の専門化(空中を飛ぶ機能を捨てて効率的に潜れる)」「体を重くできる(空に浮く必要がないから。これによって酸素を大量に蓄えることができる)」などの利点があるそうです。また、寒い海だと餌をめぐっての競争相手(たとえばサメ)が少ない、という利点もあります。
 このように「海」という環境に特化して反映してきた海鳥の“悲劇”は、人間との出会いです。繁殖地は陸ですから、そこで一網打尽にされてしまうのです。また、海では魚を捕る網に海鳥が大量に混獲されています。海に流されたプラスチック片はなぜか海鳥の好物らしくやたらと飲み込んでいます。あまり健康によい行為とは思えません。
 「海鳥が滅亡しても気にしない」という態度もあるでしょうが、「海鳥が生きていけない環境」が人間に好ましいとも言えないでしょう。ちょっとは気にした方が良いのではないか、とは思います。


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