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2015年04月24日06:42

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 この世には頭の良い人と悪い人がいます。頭を使う人と使わない人がいます。頭を良い方向に使う人と悪い方向に使う人がいます。だけど、どの組み合わせがその人にとって一番幸せかは、わかりません。周りの環境も関係しますから。

【ただいま読書中】『チャーメインと魔法の家 ──ハウルの動く城3』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 著、 市田泉 訳、 徳間書店、2013年、1700円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4198636141/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4198636141&link_code=as3&tag=m0kada-22
 国王付きの魔法使いが病気となり、エルフの治療を受けることになりました。問題は「家」です。呪文が充満した家を放置したら何が起きるかわかりません。そこで留守番に指名されたのが、魔法使いの遠縁の娘、チャーメイン。しかしチャーメインは、あまりに“上品”に育てられたために、できること(したいこと)は本を読むことだけ。家事も魔法もかけらも知りません。そんな少女が魔術書でいっぱいの家で好き放題できるのですから、これはもう事件が起きないわけがありません。私は楽しい予感でわくわくします。
 しかし、さすが手練れの著者です。こちらの予感をはるかに上回る予想外の展開が。ともかく「間違った状況における間違った呪文」によってとんでもない魔法が発動してしまったようなのです。でも、それに全然気がつかないチャーメイン。
 洗うべき食器と洗濯するべき洗濯物の袋と石鹸の泡で充満した魔法の家で、チャーメインは“宿なし”という名前の犬と、弟子入りを志願して押しかけてきたピーターという少年との同居生活を始めます。いやもう、伏線満載の魔法の家で、どれが重要でどれはどうでもよいのか、私は途方に暮れてしまいます(たとえば“宿なし”はオスのはずだったのにチャーメインとピーターが確認したらメスだったのです。これも立派な伏線なのです)。
 さらにチャーメインは宮殿に招待されます。なぜか財政がとっても苦しそうです。図書館で夢のようなお仕事をした後招待されたお茶会で、ソフィーとハウルと火の悪魔が登場します。それにしてもハウルの姿はあまりに意外なものです。これはもう読んで(そして笑って)もらうしかありません。
 「魔法の世界」ですから基本的には「何でもあり」なのですが、それでも「魔法の世界なりの論理と秩序と限界」はきちんと存在しています。たとえば「どこでもドア」に相当するものがあるのですが、これが実は「どこでも迷路」で……って、これのことを想起するだけで私は笑い出してしまいます。
 しっちゃかめっちゃかで高層ビルくらいの大きさのおもちゃ箱をぶちまけたような贅沢に楽しく混乱したお話ですが、その中にはちょいとシリアスなテーマ(人に必要な生きる力は何か、とか、健全な親子関係はどんなものか、とか)もこっそり隠れています。ダイアナ・ウィン・ジョーンズはやっぱりすごい作家です。亡くなったのが本当に残念です。


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