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2015年04月18日13:36

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虎(またはアンチ虎)としてのピケティ

 トマ・ピケティの『21世紀の資本』が評判になっているそうです。ただし私はまだこの本を読んでいないので(そもそもマルクスの『資本論』さえ読んだことがない怠け者なので)、本の内容については論じることができません。
 最近興味深いのは「反アベノミクス」の人がピケティを根拠としてアベノミクスを批判する動きがあること。いわば「虎の威を借り」ているわけです。で、それに対して「親アベノミクス」の人で「ピケティだけを根拠にごちゃごちゃ言うな」と反批判をしている人も登場しています。
 ところが、「ピケティの本だから」と肯定的に扱う人が「虎の威を借る狐」なら、「ピケティの本だから」と否定的に扱う人もまた逆のタイプの「虎の威を借る狐」になっているのではないか、と私にはこういった“論戦”を読んでいて感じられました。自説があってそれに対する“援軍”としてピケティを使ったり“他山の石”としてピケティを扱うのならともかく「ピケティである」を“軸”としてその回りに自説を展開するのは、「威を借る」態度でしかない、と思えるものですから。誰の本であろうと、まずオリジナルの自説をしっかり持った上で批判的に読んでいかないと、自説のオリジナリティは保持できないのではないかなあ。大切なのは「自説の正しさとそのオリジナリティ」でしょ?

【ただいま読書中】『壊れやすいもの』ニール・ゲイマン 著、 金原瑞人・野沢佳織 訳、 角川書店、2009年、2800円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/404791620X/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=404791620X&link_code=as3&tag=m0kada-22
 400ページ以上のとっても分厚い短編集で31の短編が収載されています。
 巻頭の「翠(エメラルド)の習作」で早速私は盛大ににやりとさせられてしまいます。物語の語り手はロンドンの有能な顧問探偵の同居人(アフガニスタン帰りの元軍人)。ホームズとワトソンか?と思わせますが、2人の名前は明らかにされません。ところが王族は「緑色の血」「治癒能力やテレパシーを持つ」「真の名前を人類は発音できない」ということで、あきらかに人類ではありません。この前読んだばかりの『革命の倫敦』(ラヴィ・ティドハー)ではイギリス王族は蜥蜴族でしたが、「非人類の王族に統治されるヴィクトリア時代のイギリス」って、向こうではけっこう人気のあるテーマなのでしょうか。
 本書に集められているのは「物語についての物語」のようです。「十月の集まり」なんてすごいですよ。毎月1回、1月から12月までが焚き火の回りに集まってそれぞれの物語を語る会のお話です。順調にいけば十二個のお話が聞けるはずですが、実際には…… いやもう、この余韻が堪りません。そもそも「十月が物語を語る」なんて発想を著者はどこから仕入れたのでしょう? やろうと思えば、これだけで枠物語の長編ができてしまいそうですが。
 様々な趣向と様々なスタイルで、著者は物語り続けます。物語が好きな人だったら、本書の中にどれか好きなタイプのものがみつかることでしょう。


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