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2015年04月10日06:56

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偶然の一致

 ユングは「シンクロニシティ」と言いましたが、先日の『声をなくした紙しばい屋さん』に続いて、今日の本にも「黄金バット」が登場します。これは何の一致なんでしょうねえ?

【ただいま読書中】『東京サハラ』さとうまきこ 著、 理論社、2002年、1500円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4652077084/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4652077084&link_code=as3&tag=m0kada-22
目次「西へ」「ぼくの援助交際」「黄金バット」「「ゾ」のくる日」「帰り道」

 目次に「東京サハラ」がありません。なぜ?と思っていると、作中に「ネパール語で都会のことをサハラと言う」とありました。なるほど、東京は東京サハラだったわけですね。
 「西へ」……すべての人と動物が消失してしまった東京にたった1人残された中学二年生の男子。人を求めて自転車で走り回り連絡先をあちこちに書き残し、ついに自宅の電話が鳴る……で私が思い出したのが「こちらニッポン」(小松左京)のオープニングです。さて、どうやって決着をつけるんだろう、しかも短編だろ、と思っていると……最後で脱力しました。
 「ぼくの援助交際」……こんどは17歳の男子。セックス抜きの「清い援助交際」を自分の母親くらいの年齢の女性に申し込まれて、ついつい受けてしまったのは良いのですが…… 誰にも興味を持てず誰にも興味を持ってもらえずに生きていた「ぼく」が、人生の再生の第一歩を踏み出そうと決心をするところで、私は小声で応援をしたくなります。ただ……ここに登場する童話作家。もしかしてこのモデルは著者自身?なんてことも気になってしまいました。もしそうだったら、それでどうなんだ?の話ですが。
 「黄金バット」……こちらは50歳の男性。先日読書した『声をなくした紙しばい屋さん』で「黄金バット」の口上を読んだばかりですが、こちらでも紙芝居屋のおっさんが拍子木を鳴らして子供を集め「黄金バット」の口上を蕩々と述べます。
 「「ゾ」のくる日」では小学四年生の男子の妄想と現実がいかにも小学生の世界らしい「嵐」となって吹きすぎます。そして「帰り道」。ここで初めて女の子の主人公が登場。作品の途中で「ああ」と私はつぶやきます。最後の短編でこの子が登場しなければならない理由がわかったからです。短編集の閉じ方としては、なかなか洒落たやり方です。「東京サハラ」で生きる彼らに、これからどんな人生の物語があるのだろう、と私は視線を遠くに飛ばします。


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