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2015年04月04日06:52

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米をとがない

 私は「米は、粒と粒をこすり合わせるようにとぐものだ」と教わりました。だから「磨ぐ」のであって「洗う」のではない、と。
 しかし最近の米は、磨ごうと思っても、ちょっと水をくぐらせるだけでもう濃いとぎ汁が出なくなります。精米技術が進歩して米ぬかが米粒にほとんど付着していない様子です。我が家は無洗米はあまり使わないのですが、無洗米でなくてもこれですから、無洗米が「無洗」ですむわけもわかります。
 いつのまにか「米は洗うもの、それもさっと洗うもの」になってしまったんですね。

【ただいま読書中】『殷 ──中国史最古の王朝』落合淳思 著、 中公新書2003、2015年、880円(税別)
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 たとえば「酒池肉林」など、殷について広く知られている物語は、史記など殷滅亡後の人々の記述によるものです。著者は甲骨文字による記録(すなわち、殷自身の「声」)を読み解くことで「殷」が実際にはどのような王朝だったのかを知ろうとします。
 甲骨文字は、動物の骨に刻まれた文字で、主に占いに使われました。殷では「天気予報」や「贈り物は何にしようか」といった日常的なものから「政策はどうするか」「戦争をするか」といったことまで、ほとんど何でも占いを立てていました。逆に言えばそういった記録を読めば殷がどのようなものかわかる、というわけです。
 甲骨文字はぐにゃぐにゃした線のかたまりですが、これは漢字の御先祖様です。そう言われるとたしかに「人」は「人」(人が立っている姿を横から見たところ)に見えてきます。
 技術で目立つのは、青銅器と玉器です。特に青銅器の精緻さは、現代の技術でも再現するのは困難なほどだそうです。
 「史記」では、周の武王が殷を倒すために4万5千の軍を集め、殷は70万人だった、とあります。しかしそこまでの動員が3000年前にできたかどうか、著者は否定的です。農民から兵を徴発する制度ができたのは戦国時代で、その前の春秋時代には大動員はできませんでした。また、初期の甲骨文字の記録では、せいぜい三千、多くて五千の動員だったのです。殷には先進的な青銅器の兵器や馬車(戦車)もありました。ただ馬車を使うには平地でないといけないため、山岳地域では殷は苦戦をしていたようで勢力範囲はそちらにはあまり広がっていません。話を大きくするのは簡単ですが、現実はけっこう厳しいようです。
 王が狩りをする範囲を見ると、殷の王の直轄地はそれほど広くなかったようです。農業が主力で各地に人口が分散している状態では、地方領主の力が大きかったはず。甲骨文字では戦争の場面でよく地方領主が登場します。戦争のたびに王が地方領主に対して動員をかけていたようです。さらに地方領主に関して王との血縁関係の記述がありません。地方領主の独立性はけっこう高かった様子です。それに対して、殷の後の周では「姓」によって土着諸侯を支配するシステムが用いられました。政治制度は時代によって変化します。
 祭祀に関する記述も多く残されています。残酷に思えるのは、犠牲として、動物や人間が神に捧げられていたこと。動物は世界中で犠牲にされていますが、殷では戦争捕虜を奴隷とし、同時に犠牲にも用いていたようです。同時に、というか、当時は農奴が使われていなかったため、奴隷とした捕虜には祭祀での犠牲以外に良い使い道がなかったのかもしれません。面白いのは、「占いの結果」を人為的に操作する方法があったことです。骨に問いたいことを刻んで火で焼き生じた割れ目で吉凶を占うのですが、あらかじめ骨に細工することで望んだ方向に割れ目を生じさせることができるのです。著者はそれを「神権政治(神頼みではなくて、神の名を利用した政治)では合理的な手法」と述べていますが、これって、本当に神様がいたら、怒るのではないかしら。
 神を怒らせたからかどうかは不明ですが、殷は、自分たちの支配下にあった周に滅ぼされてしまいます。要はクーデターですね。ただ、昔のことですから「王位に就くべき正当性」を確立しておく必要があります。そこで持ち出されたのが「殷は天意を失った」。暴虐で淫乱だから、天に見放されたのだ、という主張で、「酒池肉林」もその一環のエピソードということです。
 紀元前16世紀に成立した「殷」は500年後に滅亡しました。ゆるやかな地方支配とは言え、そんな昔に「中国」が存在したことは驚きです。ただ「中国」の歴史は、強力な独裁制と長期の内乱状態を繰り返してきています。今の軍事独裁制度も永遠に保つものではないでしょうが、それが崩れたときに世界平和に悪い影響が出なければ良いのだが、なんてことを歴史の観点から思います。


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