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2015年03月23日07:09

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曲がり角を一つ

 最近通勤路を変えてみました。すると、これまでは道の両脇に中学生が多くいたのが、こんどは高校生がほとんどとなりました。曲がる角を一つ変えただけで、見える風景ががらりと変わってしまったわけです。
 人生の“曲がり角”も、一つ変えるだけでその人生はがらりと変わるのだろうな、と思いながら、こんどは別の道を通ってみようか、なんて思っています。人生を生き直すのは難しいけれど、通勤路は好きに選べますから。

【ただいま読書中】『ドイツ・アメリカ連合作戦 ──第二次世界大戦の「奇跡」といわれた捕虜収容所奪還作戦』スティーヴン・ハーディング 著、 花田知恵 訳、 原書房、2014年、2500円(税別)
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 ヒトラーが自殺してから5日後の1945年5月4日から本書は始まります。場所は、オーストリア・チロル地方のイッター城。ヒムラーは城を収用し、名誉囚人(著名人・権力者で比較的まともな環境で生かしておく価値があるとドイツ側に見なされた人たち)の収容所としていました。43年にイッター城の司令官となったSS大尉セバスティアン・“ヴァストル”・ヴィンマーは、粗野で残忍で無能で、囚人だけではなくて部下の兵士たちにも残酷な男としてSS内部でも有名な男でした。ナチスの暗黒面を機能させるにはうってつけの人材です。実際にイッターに転任になる前にヴィンマーは悪名高いダッハウで権力の中心人物の1人でした。
 城に送り込まれたのは、フランスの元首相や高級軍人、その秘書、ドゴール将軍の身内などの“VIP”でした。ヒトラーは彼らを連合国との交渉の“駒(または人質)”として使うつもりでした。しかし敗色濃厚となったら、もう利用価値はありませんからさっさと殺してしまった方が面倒がないかもしれません。連合国軍が近づくにつれて、オーストリアのレジスタンスの活動は活発になります。しかし同時に、敗走するドイツ軍がどんどん流れ込んできて、オーストリアは雰囲気が悪くなっていきます。
 しかしオーストリアにもレジスタンスがあって、オーストリア出身の“ドイツ軍人”にもレジスタンスのメンバーがいたんですね。イッター城の周囲にもそんな人がいて、VIP囚人と通じていたのです。
 ナチスドイツ終焉の日が近づき、イッター城の司令官や警備兵はさっさと逃亡します。囚人たちは喜びますが、問題は城の周囲に充満しているドイツ兵たち。いつ城になだれ込んで自分たちを殺すかもしれません。レジスタンスのドイツ軍とアメリカ軍に向かって“伝令”が出されますが、救援依頼を受けた方も困ります。あたりで略奪や破壊を続けている武装親衛隊からどうやって城と町と自分たちを守れば良いのでしょう。ドイツ国防軍ガングル少佐は、城近くの町ヴェルグルの守備隊ごと投降し、アメリカ軍の進軍を速めることで城の安全を確保しようとします。しかし、アメリカ軍までの11kmには、投降しようとする人間を殺そうとするドイツ軍と、ドイツ軍と見たら殺そうとするレジスタンス武装兵が充満しています。そしてアメリカ軍に近づいたら、白旗をかかげていても「敵」を問答無用で撃ってくるかもしれません。
 なんとかたどり着いた最前線で話を聞いた米軍戦車隊のリー大尉は、にっこり笑って「どうやらみんなで救出作戦に行くことになったみたいだな」と言います。驚いたことにドイツ車に同乗してリーは自ら“敵地”に乗り込みます。ヴェルグル守備隊の降伏を受け(でも武装解除はせず)城にも乗り込みます。剛胆としか言いようのない行動です。しかも、引き連れていった戦車と歩兵はヴェルグルの防衛に回し、城に向かうのは戦車1両とアメリカ兵10名、それとヴェルグルを守備していた武装親衛隊員が1名にドイツ兵が14名……って、こんな「軍隊」って第二次世界大戦でありましたっけ?
 その夜、城はSSに攻撃されます。ただ、もともと「城」ですし、囚人の逃亡防止のためにいろいろ手を加えられているので、守備する側には有利な条件が揃っています。さらに、無線は壊れていましたが、町に電話が通じました。城に肉薄する武装親衛隊の情報を、レジスタンス経由でアメリカ軍に伝えることができるのです。対戦車砲でシャーマン戦車は破壊され、88mm砲弾や20mm砲の雨あられです。救出されるべき「囚人」たちも武器を手に取ります。しかし弾薬は乏しくなります。頼みの救援隊は、不運や官僚仕事に邪魔されてまだ遠くです。ただ、アメリカ軍を迎撃するべき部隊が城の攻撃にかり出されたため、防衛戦が手薄になるという“良い効果”もありました。
 下手な小説よりも劇的な話です。いやあ、現実というのは不思議なものですねえ。


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