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2015年03月22日07:26

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風化

 オウム真理教でさえ「知らない人」が増えて新しい入信者がいる、というのを聞くと、先の戦争のことを「知らない人」が増えるのは当然だ、とも思えます。

【ただいま読書中】『だいじょうぶ?体でアート ……ピアス&タトゥーのリスク』ベス・ウィルキンソン 著、 冨永星 訳、 大月書店、2009年、1400円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4272405373/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4272405373&link_code=as3&tag=m0kada-22
 タトゥー、ピアス、焼き印などの「ボディアート」は、古くから世界各地で行われてきました。
 「タトゥー」という「ことば」は、タヒチの「タタウ」をクック船長がヨーロッパに持ち込んで広がりました。行為そのものは、古代エジプトの粘土人形が最古の証拠だそうです。宗教的信念の発露、社会的地位を示す、刑罰、ファッション、さらにはアートなど様々な意味を込めてタトゥーは彫られます。アメリカでは1891年に電動式タトゥーマシンが開発されタトゥーがブームとなりました(1935年のライフ誌にはアメリカ人の10%がタトゥーを入れている、という記事があるそうです)。
 タトゥーを入れると決心した場合、アーティストをどうやって決定するか(避けた方が良いのはどんなタイプか)など具体的な話が始まります。日本では、かつて刑罰だったことやヤクザの入れ墨のイメージから、いくら「これはアートだ」と主張しても社会ではまだ受け入れ状況は悪い、ということも認識しておく必要があるでしょう。「注意」は「直前直後に飲酒はしないこと」など、きわめて具体的です。健康に対するリスクもまた具体的に述べられています。
 耳へのピアスやボディピアスの「健康障害」は非常にわかりやすいものです。要するに「外傷」ですから化膿することがあります。本書では、自分ではせずに医療関係者にしてもらうことを推奨しています。さらに、金属アレルギーの問題。舌ピアスでは、歯や歯茎の損傷。
 イギリスでは焼き印(ブランディング)は刑罰でした。廃止されたのは18世紀のことです。フランスでは、プロテスタントはカトリックに対する“犯罪”であるとして「フルール・ド・リ(イチハツの花弁が3枚、丸い帯で束ねられた図柄)」を肩に焼き印で押しました。“焼きを入れる”ことでケロイドが形成されるのですが、慣れた人がやらないと結果は悲惨なことになるそうです。アメリカでもベテランのブランディング・アーティストは数人しかいないそうです。ブランディングは相当な痛みを伴いますが、その時脳内にはエンドルフィン(脳内モルヒネ)が分泌され、多くの人はハイになります。そのため「ブランディング依存症」が発生することがあるそうです。
 タトゥー・アーティストやピアサーの人物像紹介もあります。施行しているのが人間であり「プロ」であることが知らされます。逆に言えば、プロではない人も横行している、ということなのでしょうが。ボディー・アートをしている人も様々紹介されます。孤独とか愛情とか仲間内の人間関係とか世間に誇示するためとかいろいろな理由が登場しますが、ちょっと意外だったのが「なんとなく」がけっこうあること。それと「手術の傷跡を隠すためにタトゥーを入れた」という人もいます。こういう“用途”もあるんですね。
 「タトゥーをレーザーで消す」ことは、可能です。可能ですが、レーザーは万能ではありませんし、痛みがあります。時間もかかります。もちろんお金も。切除手術で取り去ることもできます。しかしこれも万能ではないし、傷跡が残ることがあります。
 現在のアメリカではボディー・アートは「流行」しています。しかしどんな流行もいつか終わります。そのときボディー・アートは簡単に「なかったこと」にはできません。だから、実際にどのようなものかきちんと知って自己責任で決断すること、と本書の著者は述べています。私はその意見に賛成です。


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