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2015年02月10日06:20

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インド人もびっくり

 日本の「カレー」を食べたら、インド人は「美味しい和食」と言いそうです。まずい和食と言うかもしれませんが。すると、「アメリカの和食」を食べたら、日本人は「美味しい(または、まずい)アメリカ料理ですね」と言わなくちゃいけないのでしょうか。

【ただいま読書中】『ジョブズの料理人』日系BP社出版局 編、日系BP社、2013年、1400円(税別)
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 佐久間俊雄さんは、中卒で鮨屋に就職、ステップアップしていく途中でなぜかハワイから声がかかります。そこで後に結婚する人と出会い、結婚後はそのままアメリカで仕事を続ける気になります。サンフランシスコでいくつかの店で仕事をした後、1985年に「スシヤ(鮨家)」という鮨専門店をシリコンバレーのパロアルト市に開きました。当時「和食店」は、鮨・天ぷら・すき焼きなど何でもありが普通で、「スシヤ」というだけで注目されました。繁盛店を当時の経営パートナーに譲り、隣のメンロパーク市に「トシズ・スシヤ」を開店。そして3店めの「桂月」で、京都で修業した板前を入れて会席料理も始めました。シリコンバレーで会席料理というのは大きなチャレンジだったようですが、見事に成功。しかし60歳を越え、26年も異郷の地で仕事をしてきた疲れなどから、佐久間さんは閉店することにします。その閉店の日が、スティーブ・ジョブズの葬式の日と重なっていました。
 当時アップルから追われていたスティーブ・ジョブズはスシヤに一度やって来ましたが、スーツに蝶ネクタイという姿が佐久間さんには印象的だったので良く覚えているそうです。しかし、ジョブズが“常連客”になったのは、次の店「トシズ・スシヤ」からでした。その時ジョブズはアップルに復帰していました。最初は持ち帰り鮨専門で、それも巻物ばかりという“和食初心者”でしたが、一緒に会食を定期的にする(オラクル共同創業者の)ラリー・エリソンの影響で、少しずつ食べることができるものの幅が広がっていきます。その時のジョブズに対する印象は「破れたジーンズ」「注文するのも取りに来るのも、すべて自分で」という態度だそうです。
 佐久間さんはジョブズを特別扱いはしません。予約がなかったら順番を待たせます。しかし、頑固でこだわりが多いジョブズは、逆にそういった(完全平等の)扱いが気に入っていたようです。リーマンショックで客があまりに減ったため桂月では一時ランチを中止しました(店を開ける方が損をするからです)。ところがジョブズは「週に1回、貸し切りでランチを」と言います。上級副社長のジョナサンと一緒にランチタイムです……って、「ジョナサン」はアップルのデザインの全権を握っているジョナサン・アイブですよね。なるほど、二人はランチタイムも一緒に行動する仲だったのですか。カウンター越しに眺めるジョブズの表情は「カリスマ」「偉大な経営者」「変わり者」「偏執狂」「家族を大事にする夫・父親」と様々でした。
 「桂月」の大物常連は、スティーブ・ジョブズだけではありません。錚々たるメンバーが次々登場して、そこで雑談や議論や和気藹々の談笑をしています。そこから新しいアイデアが膨らんでいくこともありますし、「次のCEOに」とヘッドハンティングをしている場合もあります。店内の活況でアメリカ経済の状態も判断できます。それをジョブズも“定位置”から観察していました。
 佐久間さんがアメリカで仕事をしている間に、アメリカでの和食の地位も変動しました。最初は魚の仕入れ自体に苦労していたのですが、それが改善されて「スシヤ」を開業することになります。寿司がアメリカに定着すると、独自の進化をしました。カリフォルニア・ロールがその代表で、佐久間さんの店がそういったロールを出さないことで「クリエーティブではない」と評価されたりしたそうです。会席料理で佐久間さんが苦戦したのが、アレルギーとベジタリアンと宗教の制約です。アメリカ人は「○○と◎◎は食べられないから、別の料理に変えてくれ」と言うそうです。あらかじめ料理が決まっている会席料理でそれを言われると料理人は困るのですが、そこが腕の見せ所、頑張るそうです。にぎり鮨の注文の仕方も実に“アメリカン”です(「マグロを5貫」とか言うそうです)。
 時節柄日系BP社が「ジョブズ」を“テーマ”に据えるのもわかるのですが、それなら佐久間さんの店で“短期トレーニング”を受けたジョブズのプライベートコックにもインタビューするとかして欲しかった。アメリカ人の和食の受容と需要が実際にどんなものだったのか、「店」だけではなくて「家庭」からも見たら面白い世界が見えてきそうですから。


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