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2015年02月06日07:04

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読んで字の如し〈草冠ー9〉「夢」

「春夢」……冬に春を夢見る
「夢を見る」……特殊な視力
「正夢」……正しい夢
「悪夢」……悪魔の夢
「夢魔」……悪夢の仕掛け人
「夢中」……夢の中
「無我夢中」……夢の中では「私」は存在しない
「夢現」……夢幻よりは現実寄り
「同床異夢」……夢の個人主義
「夢殿」……夢の置き場所
「夢路をたどる」……夢で舗装された道を歩く

【ただいま読書中】『蕩尽する中世』本郷恵子 著、 新潮社、2012年、1300円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4106036967/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4106036967&link_code=as3&tag=m0kada-22
 「地方は非常に豊かであった」と著者は始めます。「倒れたら土でも掴め」の受領は「地方の豊かさ」を手当たり次第つかみ取って都に運ぶ役割を果たしていたのだ、と。芥川龍之介が小説とした今昔物語の「芋粥」もまた「地方の限りない豊かさ」(と都の生活のみすぼらしさの対比)を示している、と著者は読みます。また「受領」は、中央の貴族からは一段下の存在として扱われていましたが、地方からは有力者・権力者・あこがれの存在だった、という“評価する視線のずれ”も指摘されます。
 白河院の時代には、それまでの女系原理(外祖父)と新しい父系原理(院政)、それまでの情緒的結び付きと新しい文書主義が並立し、時代が変わろうとする活況を呈していました。その中核に位置するのが「蕩尽の原理」である、と著者は見ています。中央に集められた過剰な富が蕩尽されることで「日本経済」が回り始めたのです。
 「権力」とは「富の吸い上げシステム」です。そして中世日本では「富」が存在するのは「地方」でしたから当時の「権力」とは「地方からの富の吸い上げシステム」ということになります。
 そういえば「大英帝国」もまた「地方(植民地)からの富の吸い上げシステム」でしたね。インドなんかその典型で、綿や茶などイギリスが欲しいものがいっぱいあったのに、イギリスがインドに売りつけたかった毛織物は全然売れなくて完全なイギリスの入超でイギリスは困ってしまっていましたっけ。
 さて、文書主義が発達すると、今の手形にあたるようなものも登場します。富の流れが複雑化してきます。強訴も盛んに行われるようになりますが、それに対抗して中央が採用したのが「武士」でした。それまで辺境の防衛に用いられていて中央からは遠ざけられていた武士が、堂々と中央に迎え入れられたのです。その結果が保元・平治の乱ですが、こういった戦争もまた「蕩尽」の一つの形と言えますね。
 鎌倉時代の御家人には「経営」の才覚が必要になりました。日本各地に散らばった所領をきちんと管理し、「いざ鎌倉」の時に一族をまとめて駆けつける必要があるのです。本書には「千葉氏」が取り上げられていますが、守護国の下総・名字の地の千葉荘・肥前・伊賀などに所領が散らばり、さらに公事を勤める鎌倉や京都などを結んで様々な情報や人や物資が行き交い、その全貌を把握することは相当困難そうです。これは御家人だけではなくて、荘園を管理する寺なども苦労していたことがこの前読書した『戦乱の中の情報伝達 ──使者がつなぐ中世京都と在地』(酒井紀美)に描かれていました。こういった“不在地主”たちは、「蕩尽すること」にだけ興味があって、地域の活性化とか再生産の重要性などは視野に入っていなかったはずです。独自の貨幣がなくて中国からの輸入銭のみ、という状況では「蓄財」という概念があまり力を持たなかったのかもしれません。
 鎌倉幕府の力が衰え、地方には「悪党」が出現します。彼らの所には富が集まり、それと同時に「自由(反体制)」の気運が芽生え、それを後醍醐天皇は結集して「新政」を実現しようとしましたが、結局またもや「蕩尽」の究極形である戦乱に。
 室町時代に「蕩尽」は様式化されます。幕府は「贈答」を政権維持のシステムに組み込んだのです。鎌倉時代末期から「八朔(8月1日に贈答をする習慣)」が盛んになり、「贈答される物の実質」よりも「その品の格式」と「換金性」だけが重要視されるようになります。将軍は自分の宝庫から名品を贈答用に放出します。織田信長が茶道具を権力維持に用いたことを私は思い出します。そういえば名品に「名前」が付与されるようになったも、室町時代からだそうです。「もの」に「物語」が付着するようになってその価値を保証するようになったのかもしれません。蕩尽が“形式化”されたようにも思えますが。
 現代の日本社会でも、贈答の習慣にその「蕩尽」は生き残っていますが、たとえば経済システムでの公共事業もまた「蕩尽」の変形の一つとして生き残っていますね。「時代遅れ」になっていなければ良いのですが。


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