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2014年12月19日07:14

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極端化

 今から40年くらい前には「氷河期の到来」を恐れる声がけっこうありました。安部公房が『第四間氷期』を書いたのもその流れからでしょう。それから「核の冬」が言われるようになり、最近は地球温暖化です。
 地球がどこまで寒くなるのかあるいは熱くなるのかは私にはわかりませんが、昭和の時代に比べると梅雨時の雨の降り方が凶暴になり台風も凶悪になり日本でも竜巻が発生するようになったところをみると、少なくとも気候が極端に走るようになったのは間違いなさそうです。もしも人間の発生する熱エネルギーなどが地球全体に何らかの影響を与えているのなら、やはり何か対策を取る必要はありそうです。少なくとも気候の極端化は起きているわけですから。

【ただいま読書中】『気象学百年史』高橋浩一郎・内田英治・新田尚 著、 1987年、3500円
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 肉眼による観測と経験の集積で成立していた気象「学」が近代的になったのは、ルネサンス以降です。1597年にガリレイが温度計を発明し1643年にはトリチェリが気圧計を発明。気圧が下がると雨になることが多いことがわかり気圧計は「晴雨計」と呼ばれました。19世紀には高気圧・低気圧といったスケールの大きな気象状況がわかるようになり、天気予報が国の業務として始められます。さらに、気象は国を超えることから国際協力も始まりました。物理学の進歩によって、大気力学や大気熱力学も発展します。モールスによって各地の情報が素早く集められるようになり、広範囲の天気図が作成可能になります。さらに、高山の観測所や気球などによる高層観測から「天気図」は立体的になっていきます。すごいのは「凧」で、9000m以上まで上げて観測をした、なんて例もあるそうです。よく糸が切れなかったこと。1898年には「成層圏」(高度11km以上の等温層)が発見されました。やがて、航空機・ロケット・人工衛星なども活用されるようになります。
 大気研究で興味深いのは、研究が「現在の地球」に留まっていないことです。たとえば、火星や金星の大気の研究、過去の地球の原始大気の研究などが本書では紹介されます。読んでいてわくわくします。もちろん将来の地球大気の予想もあります。
 気象学は「スケールの学問」と感じます。地球レベル(あるいはそれを超えるレベル)での研究が必要ですが、それと同時に、ミクロの分子レベルでの研究も重要です。たとえば「雷はどのように発生するか」にも、仮説がいろいろあって確定されていないのだそうです。雷雲の中に入って観察することができませんから仕方ないのですが……そのうちに本当に小さな飛行ロボットを雷雲に突入させてじっくり観察や実験ができるようになるかもしれませんね。さて、どんなことがわかるのでしょうか。
 「天気予報を、物理法則から計算で出したい」は気象学者の夢の一つだそうです。現在の降水確率はその一つでしょうが、この「数値予報」はすでに1922年にイギリスのリチャードソンが試みているそうです。大正時代ですよ。すごいなあ。その基礎となるのは「流体力学」と「熱力学」です。「ラプラスの悪魔」をもし捕まえることができたら、気象学者は大喜びでしょうね(喜ぶのは気象学者だけではないでしょうが)。実際には、ミクロでは量子力学、マクロではカオス理論なんですから、困ったものなんですが。
 あまりスマートではなくて“力ずく”の「天気予報」ということになりそうですが、過去のデータの蓄積から、全地球的に今とそっくりの状況を探し出してそれを使って“予報する”という手もありそうです。気象学者としては面白くないでしょうけれど。
 気象学は、地球学であり宇宙学であり人間学でもあります。本書にも「人間」が多数登場します。何人か興味が引かれる人もいましたので、その内に暇を見て、そういった人びとについても詳しいことを読んでみたくなりました。


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