もし土地が所有できるものだとしたら、どうして「土地の所有者」は「所有の代価」を国に税金として支払わなければならないのでしょう。それだとまるで国から借りているだけ、ではありませんか?
【ただいま読書中】『午前三時のルースター』垣根涼介 著、 文藝春秋、2000年、1524円(税別)
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『光秀の定理』が面白かったので、同じ著者のデビュー作を読んでみることにしました。こちらは現代社会が舞台です。
旅行会社の営業をしている長瀬は、重要顧客の社長の頼みで、その孫(慎一郎、16歳)のベトナム旅行に同伴することになります。慎一郎の目的は、4年前にベトナムで失踪した父親の捜索。
しかしこの父親、愛車の好みが、二輪はヤマハXS1100ミッドナイト・スペシャル、四輪はいすずベレッタGT−Rという“尋常ではない美意識”の持ち主です。
「大藪春彦の世界か?」と私はつぶやきます。これで拳銃が出てきたら、まさにそうなりそうな予感がしてきますが、そこで「父親」の姿らしいものを偶然撮影してしまったテレビクルーが遭遇した暴力沙汰が紹介されます。なにか「暗黒面の匂い」が漂い始めます。その「匂い」を支えるのが、次々登場するアンティークな小道具です。117クーペ、ロンジンの腕時計、ライカ、ブルーバード510セダン……
長瀬は“旅の仲間”を集めます。まるで桃太郎がきび団子で“お供”を揃えたように。とんでもないチューンナップをしたタクシーを乗り回す運転手や現地ガイドとして有能なコールガールが見つかります。そうそう、長瀬の長い付き合いの悪友もなぜか一行に混じってきます。ただ、「桃太郎」は鬼ヶ島へ乱入できるのですが、長瀬たちは“鬼ヶ島”ならぬ、ベトナムで暴力組織に怯えながらこっそりと行動をしなければならないのです。ツアー予約の不可思議なキャンセル、車を襲ってくるでっかいアメ車(+銃器)、ホーチミン市(サイゴン)で敵対する二つの組織の暗闘……言葉が通じない異国で、長瀬は暗中模索を続けます。
たった4日間の物語なので、本当に駆け足です。上下二巻くらいにしたら、もうちょっとあちこち膨らませることができる素材がてんこ盛りですが、大急ぎでベトナムを駆け抜ける旅も、まあ良いものではありました。凜とした生き方を貫こうとしているのに、あまりにでかいものを背負わされた慎一郎少年の行く末は気になりますけれど。
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