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2014年11月25日06:49

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読んで字の如し〈草冠ー4〉「華」

「中華料理」……中くらいに華やいでいる料理
「中華丼」……丼には国でも乗せられる
「国華」……国の華
「繁華街」……自然が豊かな街
「豪華」……豪快な華
「豪華版」……版木が金無垢
「昇華」……昇天する華
「法華の太鼓」……最初はよく鳴らないものの代表
「蓮華」……拉麵付属のハスの花
「華族」……先祖は華やかな一族

【ただいま読書中】『京都に残った公家たち ──華族の近代』刑部芳則 著、 吉川弘文館、2014年、1800円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4642057854/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4642057854&link_code=as3&tag=m0kada-22
 「華族」と言ったら私は「爵位」とか「貴族院の議員」と反射的に答えてしまいますが、実はその“内部”はふくざつだったそうです。“出身”も、公家や大名の「旧華族」と勲功による「新華族」に大別され、公家も江戸(東京)に出た者と京都に残った者とに分けられます。公家華族は「伝統」を背負って気位は高く結束して武家華族や新華族と一線を画していましたが、貧乏な者が多かったそうです。
 著者がなぜこんな本を書いたかと言えば「誰もこの分野に注目していなかったら」だそうです。
 慶応三年(1867)御所内で「王政復古の政変」が起きました。薩長を支持し令外官を廃止するなど、それまでの「秩序」を変革するものでした。戊辰戦争では若手の公家たちが次々出撃しました。東北での戦争が終わると、その多くは京には戻らず東京で勤めることになります。では出撃しなかった公家は何をしていたかと言えば……古式ゆかしい御所の行事を粛々とおこなっていたのです。そういった“旧弊”から天皇を引き離すため、大久保は大阪遷都を画策しますが失敗。次に東京奠都(完全に移動する遷都ではなくて、とりあえずもう一つの都をつくること)を強行します。明治二年に天皇の東幸、多くの公家もそれに従います。そして、皇后までもが東京へ、となり、京都は騒然となります。
 武家華族にとって、廃藩置県は天地がひっくり返るような衝撃でしたが、公家華族にとっては従来からの家職(神楽、蹴鞠、陰陽道、など)の廃止が同様の衝撃でした。「秩序」がひっくり返るだけでは無くて、生計の道が断たれるのですから。ともかく、明治9年のリストでは、京都に残った公家は56家。天皇の還幸まで留守を預かる、という意識だったはずです。
 華族は「四民の上に立つ」ことが求められました。ところが常職に就けず食い詰めるものも続出。政府からは陸軍士官になることを勧められますが、多くの公家はそれを拒絶します。明治17年に華族令が公布され、京都の華族の大半は子爵が授与されます。これには「下から二番目かよ!」と不満を漏らす公家が多かったそうです。
 さらに困ったことがあります。皇族・華族・政府官員は国家の祝祭日には大礼服を着て儀礼に参加しますが、その調整費用は100円以上、しかも明治初期には東京か横浜でないと調整できませんでした。そのため京都の華族は、小礼服(燕尾服)で代用していましたが、華族令によって大礼服の着用が義務化されてしまったのです。また、京都での儀礼に天皇は不在ですから、その代用として御真影が用いられました。
 困窮した公家救済策として「援助交際」もありました。富裕な武家華族と縁談を結び、輿入れ費用として多額の援助を頂くのです。武家は公家との関係で「名誉」を入手できるのですから、双方に悪い話ではありません。久世通章が結婚したときには親族の鍋島家から3000円も援助してもらっています。しかし岩倉具視は、借金に借金を重ねいざとなったら親戚に頼ったり援助金をあてにする華族の態度に危機感を持ちます。実際に「家族の体面を傷つける事件」がいくつも本書には紹介されています。浪費と女色と……読んでいてとほほの内容ですが。
 東京の華族とは違って、公職に就くこともできず経済的にも恵まれない京都の公家華族は、歴史的な「天皇との由緒」だけを頼りに生きていて、宮内省もその「由緒」を無視はできませんでした。大礼の時に重要である「有職故実」が、京都で“保存”されていたからです。昭和18年の調査では、京都には公家華族が26家残っていました。そして終戦後には華族は廃止されます。一つの歴史の局面が、ここで終わったのでした。


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