mixiユーザー(id:235184)

2014年11月23日07:21

57 view

ペンは剣より強し

 ただし、まずは社会に文字を普及させる必要があります。

【ただいま読書中】『マッド・サイエンティスト』スチュアート・デイヴィッド・シフ 編、荒俣宏・他 訳、 創元SF文庫、1982年(2000年4刷)、660円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4488672019/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4488672019&link_code=as3&tag=m0kada-22
 17作の「マッド・サイエンティスト」ものの短編集です。
 「サルドニクス」(レイ・ラッセル)……「邪悪な竜によって城の塔に幽閉されたお姫様を救出する白馬の騎士」は西洋では人気のあるテーマですが、本作もそのバリエーションです。東欧の陰鬱な城に閉じ込められたかつての思い人を救出せんとするロンドンの“清廉潔白な医師”が「白馬の騎士」で、「竜」は「永遠の笑顔」に苦しむ邪悪な男です。雰囲気はまるっきりゴシック・ホラー。医師は意外な手段で「永遠の笑顔」の治療に成功します。しかしそれは「医療の倫理」から眺めると「清廉潔白」と本当に言って良いものかどうか、疑問です。私には「復讐」という動機から「ミイラ取りがミイラ」になったように見えるのです。なるほど、「マッド・サイエンティスト」集の冒頭に置かれるべき作品です。
 それ以外も、読み応えがある作品が続きます。“ビッグ・ネーム”だと「ノーク博士の謎の島」(ロバート・ブロック)「冷気」(H・P・ラグクラフト)「ビッグ・ゲーム・ハント」(アーサー・C・クラーク)「サルサパリラのにおい」(レイ・ブラッドベリ)などがありますが、それ以外の私があまり名前を知らない人の作品も傑作揃いです。
 それにしても「マッド」って、何でしょうねえ。たぶん「ある一線を越えたサイエンティスト」と定義できるのでしょうが、その「一線」がなかなか難物です。「個人としての倫理観」「社会の常識」「時代の常識」などが絡み合って、単純でははありません。しかも、私たちの常識の限界を超えているから非常識に見えるだけの「ものすごくスジが通った“非常識”」まで登場する作品があるので、ますます話がややこしくなります。でも、そのややこしさが楽しいんです。


1 1

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2014年11月>
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30