進む地球温暖化、そして2月に始まったイラン戦争によってテロ国家イランが報復に行っているホルムズ海峡とバブエルマンデブ海峡の封鎖によって、にわかに関心が高まっているのが、北極海航路の通航だ(氷が薄くなった北極海を航行する船)。
◎東アジアの港から南回りだと航行距離・日数が約半分に
つい最近も韓国の商船が試験的に北極海航路を往復したと伝えられる。スターリニスト中国は以前からもっと大っぴらに航海を行っている。
彼らの関心は、北極海航路を使うと、従来の航路の半分近くに距離と日数が短縮できるからだ(図)。アフリカ大陸南回りとなると、さらに長距離・長期間となる。
もとろん北極海航路は通年とはいかない。冬季はさすがに海氷に閉ざされる(写真)。しかし海氷の溶ける夏季は、十分に通航可能となっている。
しかも研究によると、2035年には夏季には北極海の海氷はほぼ無くなるという。そうなれば冬季に閉ざされる北極海航路は通年化されることになる。
東アジアに海港を持つスターリニスト中国や韓国にとって、北極海航路は3つのチョークポイント、すなわちマラッカ海峡、バブエルマンデブ海峡、スエズ運河を通らずに済むのは、通航距離と期間の短縮と並んで安全な航海の安全という点で重要だ。
◎輩出される煤がアルベド弱めてさらに温暖化を促す
しかし地球温暖化に関心を寄せる研究者たちは、北極海航路への関心の高まりに懸念を強めている。北極海の通航が増えれば、さらに海氷を溶かす。さらに排煙によって環境にまき散らされる煤(ブラックカーボン)が増える。2015年から21年にかけて北極海航路を通った船舶が約25%増加した結果、ブラックカーボンの排出量は2倍以上に増えたという。
ブラックカーボンは雪や氷に積もると海氷の反射率(アルベド)を著しく低下させる。北極海の海氷は太陽光を反射して地球の気温の上昇を抑える役割を持っている。アルベドの低下で、地球温暖化はさらに進む可能性が高いのだ。
◎氷上でアザラシを狩るホッキョクグマはどうなる!?
これによる大きな危険を受けるのは、食の9割を海氷上のアザラシの捕食に頼るホッキョクグマだ(写真=氷上で捕らえたアザラシを食べるホッキョクグマ)。海氷が溶けて夏季にアザラシを狩れないホッキョクグマは絶食を強いられ、著しく痩せ衰える。これ以上、海氷の融解が進めば、彼らは食を絶たれることになる。
ホッキョクグマの生態を研究している一部の動物生態学者は、すでにホッキョクグマの生態が一部で大きく変わっていることに関心を寄せている。つまりアザラシ捕食に期待できなくなったホッキョクグマの一部は、陸上の動物捕獲に食生態を変えているという。
極北の生態系は、微妙なバランスで成り立っている。頂点捕食者のホッキョクグマの食生態が大きく変われば、生態系のアンバランスから他の動植物への影響も大きくなる。
◎テロ国家ロシアに航行の安全を委ねていいのか
さらに世界の安全保障にとっても、問題は多い。北極海の東半分はテロ国家ロシアの沿岸だ。北極海航路が常態となれば、通航料の徴収などで彼らに大きな利益をもたらす懸念がある。そして航行の安全は、テロ国家に完全に委ねられる。これでは、テロ国家イランに完全に通航を握られている今のホルムズ海峡と変わらない。
こうしたことをこもごも考えれば、北極海航路の進展は、決して歓迎できることではないだろう。
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