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2023年05月22日14:35

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カラヤンのいないベルリンフィル

レコード芸術誌がなくなるとのこと、最近は立ち読みさえしていなかったので、言えた立場ではないが、とても残念だ。
中学生の頃、レコード芸術誌は、魅惑にみちた大人の雑誌にみえた。そして高額で買えず、駅前の書店にて立ち読みしたら止まらず、広告の新しいCDは、オーロラのごとく世界の神秘を垣間みせながら、いつか手に取る日を待ってくれているようにもみえるのだった。

あたりまえと思っていたこと、価値や権威だと思っていたものが転倒する。

しかしまあ、自分の人生経験は、こういうことの繰り返しだった。
この世は無常、盛者必衰の理をあらわす。

中高の学内では、ラグビー部が世界の中心にみえたし、ポンコツ野球部員として、精神主義的な練習に明け暮れた。
が、不祥事もあったり、科学的トレーニングが入ったりで、いまは運動部の価値はさほどでもなかろう。

メインカルチャーとサブカルチャーみたいなことも、大逆転のはてに、ロックが流行ってるわけでもまったくない。
きみはロックなんか聴かないと思うけれども、、、byあいみょん
ジャニーズや秋元や歌舞伎が隆盛を誇ったが、崩壊が見えてきた。

若いとき村上春樹を読んでいる感じでは、オペラに詳しくなってコンサートの休憩時間に佇んでいたらモテモテなのかと思った。
が、そんなことはないというよりは、むしろ真逆だった。

長岡鉄男は、太宰治のトカトントンという小説が好きとして、敗戦後何か真剣になったらトカトントンという工事の音がきこえて脱力してしまうという主人公についてシンパシーを書いていた。
そして、アムロもコムロもトカトントン、という、個人的には名言を残している。

ここまで流動的であれば、いっそ人気投票や名声やいいね数なんて捨ててしまおう。
作品が作られたそのとき、演奏されたそのときに帰る。いまの自分の感受性だけに素直になる。
ベートーヴェンも同時代の支持者なんかしれてるのだし。

カラヤン以前のベルリンフィルの音が気になっていた。
フルトヴェングラーだが、モノラル録音が悪すぎて、比較対象にならない。

1960年前後のスタジオ録音。カラヤン自身の含めて、洗練されてインターナショナルになっていない、ゴツゴツしたドイツの職人男性集団のような音。

ベームがいちばん適任で、ブラームス、モーツァルトに名演あり。
英雄も聴いてみたい。

マイミクさんに推薦された、クリュイタンスのベートーヴェン全集。
ハイレゾ2500円ぐらいで買ったが、だんだん愛聴盤になってきた。盤ではないか。

フランスの軽く明るい持ち味が指揮者にありそうなので、コテコテのドイツを求めると違ってくるが、正真正銘ドイツのサウンドであって、フルトヴェングラーの雰囲気もなくはない。
カラヤンの雰囲気はあまりない。

音質は、モノラルを10で最新録音を100とすると、既に80ぐらいである。
こんな音質で後世にベートーヴェン交響曲を残せるなんて、当時は夢中になっただろう。

これ以降にも素晴らしい演奏、録音、編成や楽譜や楽器の変化もあるけれど、さすがクラシックというべきか、年が経つごとに、ベートーヴェンの生きた時代に近いという価値さえ感じさせる。

カラヤンが爆発的に発展させたクラシック録音産業界。
その功績は消えないし恩恵も受けたが、カラヤン無しでも、この世界にはベートーヴェンのレコードがあって、売れようが売れまいが、真に卓越した人間性が病みながら世界史の転換点に闘った魂の記録は聴ける。
そして、世界中のマジョリティがそれを聴かなくなっていったとしても、いま私がその魂の価値を知っている。
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