mixiユーザー(id:6327611)

2015年12月12日05:06

1603 view

原節子、初の母親役映画。小津安二郎監督「秋日和」(1960)再見。

原節子追悼という意味で、NHK−BSで放送した「秋日和」を見直しました。1960年の作品で、僕にとっては「彼岸花」よりずっと楽しかった。2時間8分もあるのですが、一気に見てしまいました。

物語は、母親秋子(原節子)と二人暮らしの三輪アヤ子(司葉子)が、父親の七回忌法要を営むところから始まります。父親の親友だった間宮(佐分利信)、田口(中村伸郎)、平山(北竜二)らが集い、アヤ子の縁談を進める話が勝手に進みます。間宮は自分の会社の後藤(佐田啓二)を薦めますが、アヤ子は会うまでもなく断る。しかし実際に会ってみるとまんざらでもない、という展開。

この時、原節子は40歳です。だから役の上で24歳の司葉子(実年齢は26歳)の母親というのは少し無理がある感じ(役の上では二十歳で生んだ子となっていますから45歳)。でも見ているうちに無理でなくなります。←テレビで初めて見たころには、いちいち実年齢を調べて見ることなどしないし、すんなりと親子だと感じていました。あのころは二十歳代の僕から40歳を眺めると、完全に“中年”でしたから。

すぐ前に「彼岸花」を見直して、小津も耄碌したのかなんて書きましたが、この「秋日和」はテンポがいい。浪花千栄子は出てきませんが、岡田茉莉子のセリフ回しが僕には最高でした。それにとってもかわいい。←ますます吉田喜重の映画を毛嫌いしてしまう。

小津作品で、若い男女がラーメン屋に入る場面があるのはこの映画だと思っていて、たしかに佐田啓二と司葉子がラーメンを食べるのですが、僕が思っていた男がラーメンの講釈をする映画はこれではなかった。鶴田浩二だった気がするから「お茶漬けの味」か? カラーだと思っていたから「秋日和」のラーメンとごっちゃになったのかも。

岡田茉莉子が、おじさま連中を相手にやりこめるシーンが抜群ですね。佐分利信の会社のセットが「彼岸花」とまったく同じ(応接室の位置なども)というのは御愛嬌。会社に殴り込んだ岡田茉莉子が、おじさま連を自宅の寿司屋へ連れて行き、“ここのお嬢さん、かわいいんだ”とのたまうところ、僕は以前から大好きです。

岡田茉莉子と司葉子が、結婚して新婚旅行に出かける同僚を自社ビルの屋上から見送る場面もいいですね。車窓から花束を振る約束だったのに、それがないと怒ります。東海道線の列車のおなじみの色合いがうれしい。

この映画は「彼岸花」に続く、小津としてはカラー第2作になります。でも「彼岸花」にあったような露骨な色遊びは感じられません。「彼岸花」では初カラーということで、みんな張り切りすぎたのでしょう。「彼岸花」がいまいちだったのは、各カットが長すぎると僕は思っています。それはカラーフィルムを惜しんで切れなかったからかも。また「彼岸花」が芸術祭賞を受け、この「秋日和」が受賞しないというのは変だと思ったら、市川崑の「おとうと」にさらわれていたのでした。こういう受賞というものは対抗馬との兼ね合いですからね。

佐分利信のところへ来客を連れてくるだけの役で岩下志麻が出ています。これで認められて「秋刀魚の味」か。小津になるとニューフェイスを押し付けられるということがなかったようですね。
とりあえず明るく楽しく“古い世代”をやりこめていく、僕には痛快な映画でした。
写真2は冒頭の法事シーン。佐分利信が遅れてきて坐る場面です。その右隣が「彼岸花」で車掌を演じていた須賀不二夫。今回は故・三輪の会社の後輩役でした。写真3は小津を交えたスナップ。めずらしいので拾っておきました。
3 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2015年12月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031