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2018年12月02日07:12

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○トナム

 「ベトナム」か「ヴェトナム」か私はいつも迷ってしまいます。国名だと「ベトコン」の方がしっくりくるのですが、困ったことに民族解放戦線は「ヴェトコン」と書きたくなるんです。なぜだろう?

【ただいま読書中】『ベトナム現代短編集2』加藤栄 編訳、 大同生命国際文化基金、2005年

 日本では昭和40年代になっても文学作品には第二次世界大戦の“名残"がけっこう濃厚に残っていました。だったら、20世紀末のベトナムの文学作品にはどうだろう、と興味を持ったのが本書を手に取ったきっかけです。
 結論から言ったら“戦争の名残"はあるけれど、日本とは違った残り方でした。敗戦国と戦勝国との違いかな? 「魂を落とした男」(ヴー・バーオ)は「戦闘」そのものが登場しますが、その扱いはどこかユーモラスです。「この世の渡し」(リュウ・ソン・ミン)では戦争での死者と彼のかつての恋人との、哀しい出会いとすれ違い。ここでは戦争の悲しみが文学的に浄化されていて、単なる幽霊譚にはなっていません。日本とは仏教のあり方がずいぶん違うようで、日本的な風情とはずいぶん違っていて私は違和感を感じます(日本とベトナムは「違う」から「違和感」は当然なのですが)。
 「村娘ティー」(イ・バン)は、純朴すぎる村娘(10歳)と村になぜか迷い込んでいるインテリおじさんとの出会いとすれ違いのおとぎ話です。娘の純朴ぶりは強烈で、この種類のおとぎ話は現代の日本人作家に書くことは不可能に近いでしょうね。
 時代の流れによって権力は移動し、かつての権力者は没落して支配されていた者が社会の階梯を昇ります。ただ本書では「アメリカ」とか「南ベトナム政府軍」など名称やその姿が露骨には描かれません。書かなくてもわかる、ということなのか、それとも、同じ民族同士が戦ったことの傷を早く癒やすためになるべくソフトに描こうとしているのか、そのどちらかかな、と私は感じています。やがて朝鮮半島が統一されたあと書かれる文学作品でも、「第二次世界大戦」「朝鮮戦争」「その後の分断」はどのように描かれるのかな。できたらそれらを読めるまで、長生きしたいものです。


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