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2018年07月09日06:53

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擬人化またはアニミズム

 昔:下駄の鼻緒が切れると不吉な予感がする。
 今:コンピューターが変な挙動をすると「なんでここでそんなことをするんだよ」と罵る。

【ただいま読書中】『縄文人はなぜ死者を穴に埋めたのか』大島直行 著、 国書刊行会、2017年、2200円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4336061955/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4336061955&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=eadef4b9cdecae652af6f21db9ce3044
 縄文人は穴を掘って死者を埋めていました。私たちはそれを聞くとすぐに「お墓」という単語を思い浮かべます。しかし、それはなぜ?(たとえばナチスの強制収容所での“それ"は、死体捨て場というか処理場でしたよね)
 「墓」はアンビバレントの象徴です。アンビバレントとは、「死者への愛着」と「死への恐れ」。この両者を満足させるため、世界中で各民族は様々な「墓」と「儀式」を生み出してきました。
 ヒトが「死」を理解できるようになるのは、前頭連合野が活発に機能し始める10歳頃です。そういえば私も「自分は死すべき存在だ」と自覚したのがちょうどその頃でしたっけ。
 ホモ・サピエンスでこの前頭連合野が発達したのは3〜6万年前という推論が本書にあります。すると、その頃「ヒト」は「人」になったのかもしれません。
 「宗教は遺伝するものか?」という風変わりな問いを立て、著者は、人類学・宗教学・民俗学・脳科学・心理学などの文献を駆使して考察を重ねます。そこでネックになるのは、私たちが「現代人の視点」から縄文人を解釈しようとしてしまうことです。そこで「普遍的無意識」というキーワードが登場。ユングの「元型」がベースですが、そこから「縄文人と現代人の共通点」を抽出し、そこに考古学でわかっていることを加味して「縄文人の精神世界」を再構築しよう、というのが著者の目論見です。
 これって「文化人類学者がアマゾン奥地に行って放棄された原住民の村を見てそこからその民の生活についての『親が子供にどんな説教をしていたか』などと生き生きとしたレポートを書く」のと少し似た作業かな。ただ難点は「縄文人がすでに存在しない」「残された遺物が非常に少ない」ことと「反証可能性が非常に少ない」ことでしょう。
 「縄文土器の縄文はなぜつけられたのか?」「墓の副葬品はなぜ墓に入れられたのか?」といった問いを突きつけることで、「縄文人が実際にはどのような生活をしていたのか」「縄文人は世界をどう把握していたのか」という回答を著者は得ようとします。ところで私はもっと根源的な問いも思いつきました。「縄文人はどうやって『土器』が煮炊きに使えると気がついたのか?」です。まあ「何かの偶然で土器が生まれた」、そして「何かの偶然で土器が煮炊きに使えることがわかった」としても、では「なぜ縄文人は煮炊きをしようと思いついたのか?」と次から次に疑問は途切れません。
 1万年、日本列島の縄文人はせっせと土器に縄文を付け続けました。このことに「縄文人は土器に自身の世界観を表現していた」と気づいたのが、1952年岡本太郎でした。考古学者ではなくて芸術家が「その目」を持っていた、ということなのでしょう。
 縄文人は定住生活を円環状の村で行なっていました。定住生活の狩猟採集民族というのは、どんな世界観でどんな社会を形成していたのだろう、と思いますが、「円環状」にそのヒントがある、と著者は言います。「合理性」「平等」というのがありがちな解釈ですが、著者は「子宮」「月」を持ち出します。
 「季節の輪廻」と「月の運行」の両方が縄文人の世界観に大きな影響を与えていたはず、と著者は考えていますが、その関係についての明確な結論は出せていないようです。私見ですが、「季節」は「具象」、「月」は「抽象」というのはどうでしょう。季節の輪廻は「食」に直結します。季節ごとにどこで食糧を得るべきかは狩猟採集民にとっては死活問題。しかし「月」は(大潮を除けば)そこまで実生活には直結しているようには見えません。しかし月の運行があることは厳然たる事実。ではそこにどんな意味が?と縄文人が考えることによって「抽象の世界」に誘われていったのではないか、というのが私の想像です。当たっているかどうかはわかりません。そもそも「反証可能性」はゼロの仮説ですしね。


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