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2018年02月07日20:31

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「宇宙飛行士オモン・ラー」

読書日記
「宇宙飛行士オモン・ラー」
ヴィクトル・ペレーヴィン
 作

アメリカのアポロ計画に対抗して始まったソビエトの月面着陸計画。月の裏側目指して同志たちとともに飛び立つ青年宇宙飛行士オモン。彼らが搭乗するロケットはなんと人の手で1段目2段目を切り離し次々と犠牲となって落ちてゆくシステムだ。そしてオモンが乗り込む月面探査機ルノホートはペダル式なのだった。

憧れて入った航空学校やモスクワでの訓練の不条理ぶりなど、自分好みのアイロニカルなナンセンス小説という味わいであったが、途中同僚飛行士が譫妄状態で語った輪廻テストなるものの記録から、なにもかもが曖昧なまま進み幻想文学の雰囲気が漂ってくる。この輪廻テストの箇所は独立した作品としても扱われるらしいが、この中編の中でちょっと異常なボリュームで差し込まれていて、古代エジプト王国の思い出など幻覚の記述ながら目の離せない語り口。このまま不思議な宇宙旅行へと連れ去られてしまう感覚だ。

さて有為な若者たちのカミカゼ的犠牲によって主人公オモンがたどりついた月世界には、あっとおどろく国家的秘密があったがここはネタバレ。これぞまさしく現代の世界名作文学。
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