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2017年11月08日07:09

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特ダネ

 昔から不思議なのは、新聞記者が「特ダネ」に非常にこだわっていることです。一紙しか読まない読者には「それ」が「特ダネ(他紙には載っていない記事)」かどうかはわからないのですから。そうそう、そういった特ダネにこだわる新聞記者が、官庁では記者クラブで安穏と横並びになっているのも、不思議です。

【ただいま読書中】『僧兵盛衰記』渡辺守順 著、 吉川弘文館、2017年、2200円(税別)
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 僧兵の起源はずいぶん古いようです。5世紀の中国では寺院から武器が見つかった記録がありますし、大乗仏教の経典「梵網経」には「寺に一切の武器を置くことの禁止」が書かれています。
 荘園が発達すると自衛手段が必要になります。寺院所有の荘園の場合、その自衛手段が僧兵だったのでしょう。また、平安時代前期に天台宗叡山で後継者争いが激化したときにも、僧兵が活躍しました。南都六宗の双璧は、興福寺と東大寺ですが、この両者は激しく争っていました。それが結果として「僧兵(集団)」の隆盛につながります(わずか一反の土地争いで死者が出た例が紹介されています。「一所懸命」は寺でも同様だったようです)。
 藤原氏の氏神である春日社(現在の春日大社)の神人(じんにん、春日社の下級神職)の存在も重要でした。この神人は「国民」とも呼ばれ、雑人の「大衆(だいしゅ)」とともに奈良の僧兵の有力メンバーとなります。興福寺は春日社を支配していて、興福寺の雑人と春日社の神人が合体して「僧兵」の本格的な活動(強訴、神木動座)が始まりました。
 天台宗の「山門(延暦寺)」と「寺門(圓城寺)」の座主あるいは戒壇設立をめぐる長い長い抗争(僧兵同士の騒乱)は、死者が出たり堂塔が消失したりの「損害」を生じましたが、両派の争いによって優れた人材が輩出されました。基本的に山門の側が格が上で僧兵も数が多かったので、寺門側は「学」で対抗しようとしたのです。しかし寺門出身の座主は短命に終わる人ばかりです。叡山の大衆には貴族出身者が多かったため、貴族間の争いがそのまま寺に持ち込まれたのでした。全然「出家」になっていません。
 院政時代になると、南都と北嶺の争いが恒常的に起きますが、そこでも抗争の主力は僧兵でした。神輿が“大活躍”したのは、日吉社です。「神輿振り」と呼ばれ、北嶺の僧兵活動として特筆される働きをしています。朝廷は都に入れないように平氏や源氏の武士に命じますが、結局押し切られているところを見ると、僧兵の“武力”は武士並みだった、ということのようです。
 南都と北嶺の争いに困った白河法皇は、七つの社に平和祈願をしていますが……この「社」が騒乱の火種そのものではありませんか?
 都で南都と北嶺が正面衝突をしたら「戦争」ですから、朝廷はとにかくことを穏便に鎮めようとしました。また、都と朝廷の警備のために、武士を活用します。滝口の武士や北面の武士はこうして誕生し成長しました。
 興福寺は藤原氏の氏寺で、その別当(現在の管長)には関白の子弟が多く就任しました。そして、興福寺や春日社に対して反逆的な振る舞いをした藤原氏の氏人に対して、僧兵たちの会議が「放氏」という制裁を下すことがありました。これは「藤原氏からの追放」を意味します。これは「弱い部分を切って強い藤原氏を残す」という意味もあったようですが、鎌倉〜室町時代には22件四十余名が追放されたそうです。ただ、南北朝頃から僧兵の力は弱ってきました。武士が力をつけ、朝廷のようには幕府を動かすことが僧兵にはできなくなってきたのです。ただ、幕府は幕府で、農民一揆や国人衆(土着の武士団)への対応で忙しい思いをしていたのですが。
 戦国時代、加賀の一向一揆では僧兵が重要な役割を果たしました。また、筒井順慶・宮部継潤・安国寺恵瓊など僧兵出身の大小名もいました。しかし織田信長の「叡山焼き討ち」「一向一揆の殲滅」によって「僧兵の最期」が訪れます。
 「僧兵」と言えば、強訴によってやたらと都人を困らせる存在、というイメージを私は持っていましたが、もっとダイナミックに日本の歴史を動かしていたようです。ただ「僧」と「兵」とはミスマッチだと私には思えるんですけどね(少なくともお釈迦さんは喜ばないでしょう)。


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