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2017年06月22日07:12

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28連勝

 藤井さんが並んだ神谷さんが28連勝をしたときには、将棋の世界ではそれなりに話題になりましたが、日本社会ではほとんど取り上げられませんでした。ところが今回は「社会現象」となっています。将棋好きにとっては悪いことではないのですが、藤井さんとその対戦者に余計なプレッシャーを与えることにだけ熱心なマスコミが“大活躍”しないことは祈っています。一番大切なのは「連勝記録」ではなくて、彼らの「今」と「将来」なんですから。

【ただいま読書中】『忘れられた巨人』カズオ・イシグロ 著、 土屋政雄 訳、 早川書房、2015年、1900円(税別)
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 (たぶん)昔のイングランド(ではないかもしれません)。「鬼」を恐れながらそれでも“ふつう”の生活をしているブリトン人の村は、ホビットの村のような横穴式(ただしこちらでは各住居がトンネルで連結されています。そこでなぜか冷遇されている(村の火からは遠ざけられ、蝋燭の使用を禁止されている)老夫婦のアクセルとベアトリス(ではないかもしれません)。村人は皆奇妙な記憶障害を持っている様子ですが、そのことを自覚し悩んでいるのはアクセルだけ。
 様々な小さなエピソードが重なり、二人は息子が住む村に旅立つことを決心します。どこにあるのかわからない村へ。いるのかどうか確信がない息子の元へ。旅立ちの理由もはっきりしまいまま。この国は「健忘の霧」に包まれていますが、人々の心も同じ「健忘の霧」に包まれているのです。二人があてにしているのは、お互いへの愛情。しかし、「一番大切な記憶」さえ不確かな二人に「愛情の確かさに対する確信」はありません。
 最初に泊まったサクソン人の村は大騒ぎでした。悪鬼に襲われ、何人か殺されエドウィンという少年がさらわれたのです。そこにたまたま立ち寄ったウィスタンという戦士がエドウィンを奪還しますが、エドウィンには傷があり、サクソンの迷信(悪鬼に傷つけられた人間は悪鬼になる)のため、二人はアクセルとベアトリスの旅の仲間となります。
 一行が出会ったのは、老騎士。アーサー王の命令で旅をしている老騎士ガウェインです。アーサー王が亡くなってもう何年も経ちますが、彼がブリトン人とサクソン人に平和をもたらしたことに感謝する人は多くいました。一行は、賢者の知恵を求めて山上の修道院に向かいます。しかし山には、竜のクリエグが住んでいました。
 一行は軍隊に襲われてばらばらになってしまいますが、やがて一つの目的地に向かって導かれていきます。竜のクリエグの巣へと。いくつもの約束が交わされます。しかし、約束したという記憶が失われた場合、その約束はどこをさ迷うことになるのでしょう。
 かつて、二つの民族の間の平和協定が平和をもたらしましたが、それは結局破られその後の大虐殺によってまた「平和」がもたらされました。それを受け入れる人と受け入れない人との葛藤も本書の背後に鳴り響き続けています。しかし、その「平和」を維持する「力」が○○だったとは……これは衝撃の結末です。中世の冒険小説の形を取っていますが、ものすごく複雑で示唆的で思索的な小説です。こんなものが書けるとは、すごいや。


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