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2017年04月10日06:50

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3万の数倍数十倍の悲劇

 日本では毎年3万人自殺をする、がニュースになったのは何年前だったでしょう。
 一人自殺をしたら生じる悲劇は一つではありません。家族や親しい人の数だけ「悲劇」が生じます。すると、21世紀になってからだけに限定しても、日本では、何十万あるいは何百万の悲劇が生じたのでしょう?

【ただいま読書中】『その島のひとたちは、ひとの話をきかない ──精神科医、「自殺希少地域」を行く』森川すいめい、青土社、2016年、1400円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4791769317/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4791769317&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=0f408445ab8491da769b552181b13323
 日本の中で自殺が特異的に少ない地域があります。著者は精神科医としてそういった場所のいくつかを訪ね、「その地域の特異性」を知ろうとしました。
 参考になるキーワードは「オープンダイアローグ」。人は呼吸をするように対話をする。しかし、上手に対話ができなくなったら、人は病んでしまう。つまり、「病んだ環境」に住む人は、健全な対話ができなくなり「環境との関係性」が原因で病んでしまう可能性があります。
 著者が気づいたのは、自殺希少地域に住む人が「対話」に慣れていることでした。何でもオープンに喋ります。初対面の著者に対して、自分が精神病であることも平気で話します。地域の人もそれを全部知っています。面白いのは、その対話の結果起きるのは「話を聞いた人が『相手を変えよう』とするのではなくて、自分が思うままに勝手に動く」こと。「変えることができるのは、相手ではなくて自分」というポリシーなのでしょうか、つまり「熱心に対話をする」が「相手の話はきかない」のです。著者はこれを「相手を変えようとしない力」と表現します。
 ここで重要になるのは「地域共同体の“ポリシー”」です。その地域が何を目指しているのか、その共通目標によって人々の動きは変わっていきます。特に重視されるのが自然環境。自然環境が過酷な場合、「どのように生活するか」はそれぞれの環境ごとに異なります。それと同様に「共有される地域の目標」ごとに、人々の生活態度は異なっているのです。
 最近の日本では「NPO」が流行していますが、もしかしたら、「地域共同体」も「NPO」の一種なのかもしれない、と本書を読んでいて私は感じました。
 自殺希少地域でも自殺する人はいるし、そこで生きづらい人もいます。ただ、そういった人も、別の地域だったら生きやすいかもしれない。つまり、日本の各地がそれぞれ別々の独自のスタイルの「人の話をきかない」地域で構成されるようになったら(そして人が好きに行き来できるのなら)、日本の自殺者は大幅に減る可能性があるでしょう。


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