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2017年02月26日09:01

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本当の笑顔

 その人の笑顔が本当に素敵かどうかは、その「笑顔」そのものだけを見るのではなくて、その人の相手をしている人の表情がほころんでいるか強ばっているか、も評価の対象にする必要があります。

【ただいま読書中】『東芝不正会計 ──底なしの闇』今沢真 著、 毎日新聞出版、2016年、1000円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4620323640/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4620323640&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=a1c1800e8d83b49da9e11ae04680ae29
 「めざしの土光」さんが東芝再建を行ったとき、「チャレンジ&レスポンス」を合い言葉にしていました。「厳しい仕事にしっかり取り組め、そしてきちんと答を返せ」という仕事に取り組む態度の話でした。ところがその後、半導体事業がうまくいかなくなったとき、「チャレンジ」は変質をします。佐々木・西田・田中の三代の社長は「チャレンジ」ということばで「粉飾決算」を各事業部門に強制していたのです。
 昔のソ連では計画経済で「ノルマ」が重視されていました。非現実的な生産目標でもそれを達成できなかったらひどく罰せられるため、現場ではとにかく「ノルマは達成できた」という書類だけは提出していました。あとはいかに上手く誤魔化すか、です。それと同様に東芝でも「チャレンジ」は達成していましたが、実際には赤字を誤魔化してそれがばれるのを先送りし続けていました。しかし、「佐々木と西田の対立」は社外にも知られるくらい激しく、どちらかの派が“敵”の足を引っ張るために、内部資料を外に流出させたようなのです。そのため2015年の株主総会は荒れましたが、経営陣は紋切り型の謝罪を繰り返すばかりでした。第三者委員会が調査報告を発表しましたが、その内容は明らかに不十分なものでした。そこで著者は「第三者委員会が発表しなかったこと」に注目します。具体的には「西田と佐々木の対立」「06年に買収したウェスチングハウス(原発企業)の問題」「新日本監査法人がなぜ粉飾決算を見逃したか」です。
 ウェスチングハウスの買収は、当初の目論見より金をつぎ込むことになっていました。しかし長期的にはお買い得だったはずなのですが、11年の東日本大震災(フクシマ)で原発を取り巻く環境は一変、原発建設はリスキーでコストと時間がかかる事業になってしまいます。それが東芝にどれくらいダメージを与えたのか、東芝はなかなか発表をしようとしませんでした。歴代3社長に対する損害賠償請求に関する発表でも、役員は出てこず広報担当者に一任しています。説明責任から逃げ回る東芝の態度は、金では測れない「信用失墜」をもたらしました。そしてついに「ウェスチングハウスで1600億円の減損」という驚きの発表が。それも、子会社のウェスチングハウス単体では1600億円の減損処理を行うが、東芝グループ全体では原子力事業は好調だから連結決算では減損はしない、という意味がわからない行為です。しかもウェスチングハウスの減損処理を東芝は2年間公表しませんでした。これは明らかに東証の情報開示ルールに抵触する行為なのですが、「次から気をつけます」で東芝はあとは知らんぷりです。著者はあきれます。大騒ぎになり、そこでやっと室町社長が出てきて謝罪をします。なんだか、世間をなめた態度に私には見えます。情報を小出しにしては信用を失うことを、何回でも繰り返す体質のようです。
 そうそう、ウェスチングハウスの業績が好調、と言う主張の根拠は、これから原子炉を46基受注する見込みがあるから、だそうです。フクシマ以降の受注は「ゼロ」なんですけどね。バラ色の計画、というか、もうこれは妄想の段階に入っていません?
 金融庁は新日本監査法人に対して「運営が著しく不当だった」という検査報告を公表しました。要するに監査法人として失格、と言うことです。ついでですが、この法人は、11年に損失隠しが発覚したオリンパスの監査も担当していて、金融庁から改善命令を受けています。
 2015年は東芝にとっては「辛い年」でした。そして12月21日、株が全面安となる中、東芝に売りが集中、株価は254円と5月の半値になってしまいます。株式市場が取引を終えてから室町社長が記者会見、1万人のリストラ(全従業員は20万人)と東芝の歴史始まって最悪の5500億円の赤字になったことを発表します。「不正会計問題」は「経営危機」になったのです。リストラには費用がかかる上に赤字ですから、東芝の自己資本は大きく減少します。もう一度巨額の赤字が出たら、自己資本が消滅するくらいまで。構造改革は待ったなしです。ところが東芝は「ウェスチングハウス」には手をつけませんでした。その代わりのように、優良企業である「東芝メディカルシステムズ」を手放すことにします。
 本書は毎日新聞社のウェブサイト「経済プレミア」に著者が15年6月〜16年1月まで書いた記事をもとにした本です。だから繰り返しが多くなりますが、「リアルタイムの緊迫感」がひしひしと伝わってきます。特に著者の主観「東芝問題には『底なしの闇』がある」には、経済問題には疎い私も闇の暗さを共有できた思いがしました。


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