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2017年02月01日07:26

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技術の時間

 私が通った中学校では、技術の授業の時間に、自転車をばらして組み立てたり、小型ガソリンエンジンをばらして組み立てたり、けっこう面白い授業をしてくれました。ラジオも組み立てましたが、真空管だったところに時代を感じます。ともかく、こういった授業で私は「機械」に強い興味を持つことになりました。そのまま普通高校ではなくて高専とか工業高校に進学していたら、今とは全く違う人生だったでしょうね。ちょっと遠い目になってしまいます。

【ただいま読書中】『ユニークなエンジンの系譜』桂木洋二・GP企画センター 著、 グランプリ出版、2007年、1800円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4876872910/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4876872910&linkCode=as2&tag=m0kada-22
 19世紀末〜20世紀初め、「蒸気機関」「内燃機関」「電動モーター」が「エンジン」の主力になろうと覇を競っていました。最終的に内燃機関が勝者となったわけですが、本書ではその競争の過程で生まれた「ユニークなエンジン」をいくつも取り上げています。
 ホンダがまだ無名企業だった時代、本田宗一郎は「レースは4サイクルエンジンで行く」と決断しました。他社は同じ大きさならパワーで有利な2サイクルエンジンを搭載するのに、レースでそれに勝つためには尋常ではない工夫が必要となります。その工夫が数々の「ユニークさ」を生み出しました。
 最初は「125cc5気筒レーシングエンジン」。1気筒当たり25ccって、1勺おちょこで1杯半分。まるで模型エンジン並みの大きさですが、それで20000回転をたたき出したのですから、非常識です(褒め言葉です)。ヨーロッパでは「時計のように精密なエンジン」と評価されました。はじめは4気筒エンジンで常勝となりましたが、そこにスズキやヤマハが新開発の2サイクルエンジンを投入。それを上回る性能を出すために、4バルブにし、それでも勝てないので、はじめは6気筒が検討されていましたが、すでに「50cc2気筒エンジン」があったのでそれをベースに開発したのだそうです。
 「125cc5気筒レーシングエンジン」より早く国際デビューをしたのが「250cc6気筒レーシングエンジン」でした。これまた当時の世界では“非常識”で皆が驚いたそうです。ほとんど予備知識がないまま参入したF1でも6気筒とか8気筒が“常識”の時代に12気筒を持ち込むし、「ホンダのDNA」は草創期から健在だったようです。
 ディーゼルエンジンは構造がガソリンエンジンよりシンプルなので安いのかと思っていたら、高圧燃料噴射装置が必要だし、排ガス規制をクリアするために微粒子とNOx対策も必要だし、最近はターボ装着もふつうになっていて、実は「コスト高」なのだそうです。日本にドイツから導入されたのは戦前で、軍用トラック製造目的でした。戦後は民生トラックに活路を求め、特に大型車向けのエンジンが開発されています。そういえば昭和30年代の山道では、バスやトラックはもうもうと黒煙を吐き出しながらのろのろと坂を登っていましたっけ。
 マツダ(昔は東洋工業)は自動車製造に参入しようと準備をしていたのですが戦争のためにその努力は中断させられてしまいました。戦後は三輪トラック製造を手がけましたが、そのエンジンは先進的なものでした。当時のエンジンはサイドバルブが主流だったのに、マツダはオーバーヘッドバルブを採用したのです。発売された1トン積みのオート三輪車は、1157cc空冷2気筒エンジンで32馬力という(当時としては)驚くべき高性能でした。私はオーバーヘッドカムが当たり前でオーバーヘッドバルブは古い、という感覚なんですが、さらにそれより“前”があったんですね。
 少しでも安く軽くするために乗用車のエンジンも空冷が主流だったのですが、やがて庶民用の車にも水冷エンジンが搭載されるようになります。マツダクーペでは、軽乗用車なのに水冷直列4気筒でシリンダーヘッドにもブロックにもアルミ合金を使用する、という“贅沢”なエンジンが搭載されました。これは「軽」の次に小型あるいは普通乗用車を開発することを見据えての戦略です。
 通産省は貿易自由化を前にしてトヨタと日産だけに乗用車を生産させたいと優遇する方針でした。それに真っ向から反旗を翻したのがホンダです。国際競争力をつけたいのなら自由競争であるべき、と軽トラックを開発しますが、それに搭載したのは、同時並行で開発をしていたスポーツカー(ホンダスポーツ360)用のエンジンから発展したものでした。過激です。しかし「反旗」のおかげで、CVCCエンジンやホンダのF1を見ることができたのですから、私としては本田宗一郎さんに感謝です。
 マツダもユニークです。「世界で最初に実用化に成功」と言えば私はロータリーエンジンを思いますが、ミラーサイクルエンジンもマツダが初めて実用化に成功したのだそうです。できた2254ccエンジンは、馬力は3300ccエンジン並みで燃費は2000cc並み、というすごい数字をたたき出しています。ただ、値段も高かったため、全然売れなかったそうです。ただ、ユニークなエンジンでもそれが一般に普及したらそれは「ユニーク」ではなくて「スタンダード」になるわけですから、この本に登場することもなかったわけですけれど。


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