mixiユーザー(id:235184)

2016年05月21日07:05

256 view

お金を扱うポリシー

 桝添さんは、税金や政治資金を扱うに当たって、独自のポリシーがあるようです。きちんとした「ポリシー(政策)」を持つとは、さすが政治家!

【ただいま読書中】『ルポ 風営法改正 ──踊れる国のつくりかた』神庭亮介 著、 河出書房新社、2015年、1800円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4309247261/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4309247261&linkCode=as2&tag=m0kada-22
 2010年ころから、まず大阪で、ついで全国で風営法を厳格に適用した「ダンス規制」が行われるようになりました。各地で若者が集まるダンスホールが閉店に追い込まれ、ついで中高年に人気の社交ダンスもそのターゲットにされます。警察は「人が集まると風紀が乱れる」「大量殺人が起きるかもしれない」「ダンス教室を許すと、水着の女子高校生と抱き合って踊ることが流行するかもしれない」とその行動を説明します。大量殺人? だったら通勤の駅も規制します? 水着の女子高生? それは誰かの願望が投影されていますか? タンゴをアルゼンチン文化とするアルゼンチン大使も「あきれた」という意味の外交官的発言をしています。
 警察の行動が「おかしい」と思った人々は行動を始めます。風営法を「ダンス規制法」と呼び変え、「カラオケは規制されないのに」とわかりやすい比較を置き、「2012年から中学体育でダンスが必修となってるよ」とこれまたわかりやすいイシューを引っ張り出す戦略で、署名運動などは盛り上がっていきます。
 「クラブを規制しろ」と警察に熱心に働きかけた人たちの中には「クレイジークレイマー」(宮台眞司)も存在していました。「保育園の声がうるさい」と文句を言ったり「電車で隣に乗った男の息が臭い」と110番通報する人たちの仲間です。もちろん、本当に迷惑を受けていて困っている人もいるのですが。
 明治政府は「盆踊り禁止令」と「鹿鳴館」で西洋の社交ダンスを推奨しようとしましたが、「男女が公衆の面前で公然と抱き合うのは汚らわしい」という評価から、ダンスに「不健全」のイメージが日本ではずっと貼り続けられることになります。警察は「ダンスホールの内部は外から見えてはならない」という構造上の規制をしますが、いかがわしいから規制が必要なのか、規制されるからいかがわしくなるのか、ちょっと不思議な話になってしまいます。私は「外から見える」方が健全なダンスになると思うんですけどね。結局1940年にすべてのダンスホールは閉鎖となります。戦後に復活したダンスホールは、占領軍相手の商売もあり、キャバレーとの境界が曖昧なものになっていました。48年には風俗営業法が制定されます。規制の目的は「売春」と「賭博」。ところが規制される職種は、売春宿は外され、カフェー・キャバレー・麻雀屋などとダンスホールとされました(「売春防止法」は1956年です)。その後、ビリヤードが外されパチンコやナイトクラブや深夜喫茶が加わったり、規制の対象は少しずつ変わっていきますが、「青少年の健全育成」と「性産業への規制」は不変でした。70年代後半にはディスコが大ブームとなりますが、それに対する締め付けが始まると、アンダーグラウンドで「クラブ」が流行します。変な言い方ですが、「クラブ」は風営法が育てた、とも言えます。
 取り締まる側も大変です。騒音苦情・110番通報・薬物や傷害事件などから、まずはみっちり内定調査、次いで警告、それでも事態が変わらなければ摘発、という手順を踏んでいます。著者は警察庁の理事官にロングインタビューをしていますが、警察には警察の事情があることがよくわかります。ダンスには「光」と「影」があります。犯罪がらみのダンスホールも確かに存在しています。しかし、健全なダンスホールの摘発は、被害者がいないところに犯罪を成立させるわけですから、警察官の中には「困ったものだ」と思っている人もいるようです。しかし法律は法律。だったら法律を変えれば良い、ということになります。そこで、クラブ「NOON」の経営者金光は、署名運動を起こすと同時に法廷闘争を始めました(ほとんどの店は、逮捕されたら略式起訴でさっさと罰金を納めてしまいます)。この法廷でのやり取りが、爆笑ものです。どのくらい笑えるかは、ぜひ本書をお読みください。そして、驚きの判決が。ここで示される判決文のロジックは、シンプルで、ラディカルです。(ただしまだ最高裁の判決が出ていないので、確定ではないのですが)
 国会議員も、法律改正に動き始めました。ところがそこに、警察の大逆襲が。ここに書かれているその手口は、すごいものです。しかし、改正運動側もまた反撃を試みます。このへんの丁々発止は、なかなかスリリングです。さらに、不合理な規制を笑いものにしようとする「テクノうどん」という試みも。これは「踊っているのではなくて、音楽に合わせてうどんを踏んでいるだけです」という運動です。手ではなくて足でこねるからうどんに腰が出ます。で、踊り終わったら、もとい、踏み終わったら、そのうどんを美味しく頂きます。
 江戸時代には、三大改革なんて妙なものがあったと私は日本史で習いました。今から数百年後に、日本史で「平成の改革」なんて項目があって、そこで「憲法解釈の変更」とか「ダンス規制」なんてものが扱われているのではないか、と私は思っています。好意的に扱われていたらいいんですけどねえ、(私たちが江戸時代の政治家の行為を見て言っているように)「昔の権力者は、変なことを平気でやっていたんだなあ」なんて言われているのだったら、ちょっと辛いなあ。


0 1

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2016年05月>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031