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2015年11月10日06:53

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介護離職ゼロ

 「自分は介護なんかしたことはありません。これからもする気はありません」といった感じの政治家がテレビで会社や社会に向かって何かエラそうなことを要求がましく言っていましたが、政治家のセンセイたちは本音の所では不思議に思っているんじゃないです? 「どうして介護程度で離職しなくちゃいけないんだ?」と。「本人が頑張れば良いだけのことだ。それができないのは個人の頑張りが足りない」「どうしても足りない部分は誰かに『ちょっとこれをやっておけ』と言えばそれでおしまいだろ?」と。

【ただいま読書中】『百年前の絵本 ──R・コールデコットの前半生』ヘンリー・ブラックバーン 著、 高橋誠/桑子利男 訳、 ブック・グローブ社、1997年、2500円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4938624141/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4938624141&linkCode=as2&tag=m0kada-22
 19世紀に真面目な銀行員をしていたコールデコットは、激務のかたわら、美術の勉強もしていました。ペン画、水彩、油彩などみっちり修練をしたコールデコットの絵には、才能とユーモア精神が満ちあふれていました。コールデコットはロンドンでどんどんスケッチを描きます。そういった作品を送りつけられた編集者たちのうちの一人が、著者です。「この素材をどう扱うべきか」と著者は迷います。単独の人物像でも群像でも性格分析は的確で、デフォルメとユーモアはたっぷり、しかし刺激が強すぎて上流階級には拒絶反応を示されそうなものもたくさんありました。しかし、無難な線を狙えば、コールデコットの個性は消されてしまうでしょう。
 「パンチ」に戯画が掲載され、滑稽な小説の挿絵の注文をコールデコットは受けます。コールデコットは貪欲に仕事を受けます。描画のテクニックはまだ未熟でしたが、それはどんどん進歩します(実際に年代順に並べられた絵を見ると、それがわかります)。コールデコットは先進的な試みもおこなっていました。当時は新聞に載せる挿絵は、原画を彫版師が複製した原板から印刷していましたが、コールデコットは原画から直接印刷過程に持って行けるように多様な複製方式を試していました。非常に先見的な試みです(日本の浮世絵も、原画を彫り師が彫るものでしたが、その過程を省略して原画のタッチをそのまま最終的な製品に生かそう、というわけです)。その技法の一つが「タイポグラフィック・エッチング」(蝋を塗った原板にエッチング針で直接線を描いて線の部分だけ蝋を取り除く)がありますが、これは現在の「写真製版」の嚆矢と言えます。
 人を風刺的に描く戯画だけではなくて、自然描写にもコールデコットは優れた技量を持っていました。本書にある白鳥の絵は、ため息が出るくらい見事な出来です。そしてついに世界に知られる「絵本シリーズ」に取りかかるのですが、本書はそこで終わっています。
 戯画、写実(写真のかわり)、芸術など、様々なタッチで描かれたイラストが並んでいます。これらをすべて同一人物が描いたのだとはちょっと信じられないくらい。何かの創生期には、有り余る才能を爆発させる人物が必ず存在するのかもしれません。


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