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2015年03月16日06:27

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球春到来

 ケーブルテレビのスポーツチャンネルで野球のオープン戦をやっていました。オープン戦にしてはずいぶん観客が入っていて盛り上がっているなあ、と思ったら広島カープ対オリックス戦で、広島の先発ピッチャーが黒田でした。なるほど、アメリカから帰ってきた姿を見よう、とファンが押しかけたのでしょう。
 ところで黒田投手は「かつてカープに在籍していたエースが戻ってきた」と言うこともできますが、「現役ばりばりの大リーガー(ヤンキースのローテーションの一角)がやって来た」と言うこともできるわけです。
 あ、こう書いたら、私も見に行きたくなってきました。

【ただいま読書中】『最後の遣唐使』佐伯有清 著、 講談社学術文庫、2007年、800円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4061598473/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4061598473&link_code=as3&tag=m0kada-22
 遣唐使を廃止した“功労者”は菅原道真です。ということは(実際に唐に渡った)「最後の遣唐使」はその前、ということになります。しかしその人はあまり有名ではありません。実際に渡った人よりも渡らなかった人の方が遣唐使に関して有名、というのも面白いものです。
 承和元年(834)正月、遣唐使の任命が行われました(延暦二十年(801)の派遣以来33年ぶりのことです(延暦二十年の船に乗った“有名人”は空海))。大使に任命されたのは藤原常嗣(つねつぐ)。その父の藤原葛野麿(かどのまろ)は延暦二十年の遣唐大使でした。副使は小野篁(百人一首の「わたの原 やそしまかけて……」を詠んだ人です。なお、篁の五代前が遣隋使で有名な小野妹子です)。
 777年の第14次遣唐使では、大使の佐伯今毛人(いまえみし)が出発直前に「病気」になり、副使の小野一族の石根は第一船に乗船。唐からの帰途に船が難破して石根は死んでしまいました。この“事件”(船の交換と副使の死)が、有名な小野篁の乗船拒否につながったようです。
 ともあれ、承和三年五月十四日に遣唐使船4隻は難波津を出港します。出港するなり大嵐。四隻は輪田の泊(神戸)に避難します。それでも何とか博多に四隻とも無事たどり着き、七月二日に博多の津を出港。ところがまたもや荒天で第一船と第四船が肥前国に吹き戻されてしまいます。小野篁が乗った第二船も肥前に漂着、第三船はバラバラになって一部は対馬や肥前に漂着しますが、乗り組んだ百四十余人のうち助かったのは28人だけでした。残る三隻でトライした翌年の渡海も失敗。このときすでに、大使と副使の間はぎくしゃくしていたようです。律令政府は強硬に出発させようとします。しかし副使は「病気」で渡海を拒絶。学者の中にも船を勝手に下りる者たちがいました。
 国は疲弊していました。班田収授の法はすでに機能しなくなっており、飢饉と疫病により国家財政は破綻寸前。遣唐使の一行が出発せずに太宰府にぐずぐずしているのを食わせるのでさえ、太宰府ではひどい負担に感じていました。遣唐使一行は、少なくとも小野篁は、このような状況で大枚をはたき人命を賭けて渡海するのは無意味、と感じていました。だから彼は船を下りたのでしょう。
 さて、ともかく三隻の船(第三船は“欠番”)は博多を出航しますが、ここから本書は円仁の『入唐求法巡礼行記』に頼って記述を続けます。私の記憶が確かなら、ここの部分はほとんど直訳に近いですね。船は狙い通り揚子江の河口に到着しますがそこで船は座礁、そこから長安までは長い長い道のりです。長安に到着したら、こんどは官僚主義との長い長い折衝が待っています。円仁が天台山を巡礼できるように、大使は細かく心を砕きます。結局円仁は唐に残留することにしました。
 翌年一行は日本に帰りますが、乗ってきた船のうち二隻はもう使えません。そこで、当時外洋航海に定評のあった新羅船を九隻雇い、分乗しての帰国となりました(百数十人乗れる遣唐使船とは違って、新羅船には数十人しか乗れなかったのです)。大使の帰国後、島流しになっていた小野篁は許されて帰京します。ただし、無位無冠の扱いで、以前の位階が許されるのはしばらく後のことでした。
 当時の新羅は戦乱で荒れていて、交易目的以外に、難民も多数日本にやって来ていました。そのおかげで、日本では東アジアの情報をほとんどリアルタイムで知ることができていました。その情報の中には、唐の騒乱も含まれていました。実は中国から優れた文物を輸入するための遣唐使は、その頃にはすでに主な使命を失っていたのかもしれません。


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