最近注目が薄れたので、北朝鮮がそろそろ何かをやり出す頃ではないでしょうか?
【ただいま読書中】『張り込み姫』垣根涼介 著、 新潮社、2010年、1500円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4101329753/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4101329753&link_code=as3&tag=m0kada-22
目次「ビューティフル・ドリーマー」「やどかりの人生」「みんなの力」「張り込み姫」
『君たちに明日はない』シリーズの第3巻です。
ここでやっと、本書の短編は“リアルタイム”で描かれているのか、と気がつきました。第一巻から小説新潮に掲載された作品を4つずつまとめて発行されていて、巻末に掲載時期も書いてあるのですが、その掲載時期と作品の季節とが一致させてあるのです。細かい工夫ですが、雑誌を読む人にとっては嬉しいかもしれません。
今回真介がリストラに赴くのは、英会話学校・旅行代理店(って、著者のもともとの職場ですよね)・自動車ディーラー・出版社。けっこう大きな所が続きます。さらに「著者をモデルとしたとおぼしき人物」まで登場します。読者への大サービスです。
シリーズものの短編は、「縦糸」と「横糸」から成り立ちます。「縦糸」は主人公たちの物語・「横糸」がリストラの各エピソードです。で、面接現場で真介のとなりにいつものほほーんとした感じで座っている超美人の美代子は、これまではほとんど動かなくてたまに言葉を発すると珍しい、という印象だったのですが、この第三巻ではけっこう動くようになっています。良く笑うし、発言は増えるし、香水は変えるし。彼女も修羅場をずっと見ていて、成長しているのかもしれません。
しかし陽子さんのひたむきさは特別です。怒るときにはかんかんになって怒りますが、それで我を忘れて破壊的な行動には出ないだけの冷静さも持っています。人物観察にも優れていて、熱血というのともちょっと違う、非常に魅力的な人物像です。そして、そんな陽子さんに「ロクデナシ」と評されている真介クンもまたリストラの現場で自分自身を見つめながら、静かにその人間としての魅力を深めて行っています。……まあ、どんなに魅力的な人間であっても、リストラ面接の現場で出会いたくはありませんが。
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