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2014年12月21日07:13

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月に立つ

 月を見るたび不思議に思うことがあります。
 三日月の時に着陸しようとしたらそこが「影」の部分だったらそこに月面はあるのでしょうか?
 無事着陸したとして、こちらから見たら宇宙服姿は逆さまになっているんですよね。落ちないのでしょうか?

【ただいま読書中】『人類、月に立つ(上)』アンドルー・チェイキン 著、 亀井よし子 訳、 1999年、2300円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4140804440/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4140804440&link_code=as3&tag=m0kada-22
 本書は、著者がおこなった広範なインタビューをもとに組み立てられた「アポロ計画」そのものに関する著作です。それは「火事だ!」で始まり、一度過去に戻ります。
 ソ連に圧倒される、という悪夢から逃れるために、ケネディはあの歴史的な演説(「60年代のうちに月に人を送り込み無事帰還させる」「容易だからではなくて、困難であるがゆえに」)をおこないました。そしてアポロ計画が始まります。
 まずは宇宙飛行士集め。マーキュリー計画での「オリジナル7」に加えて「ニュー9」が集められ、それでジェミニ計画が進められます。そこにさらに「14」が加わります。死亡・病気・上院議員になる、などでの“脱落”もありますが、彼らは、ランデブー・ドッキング・宇宙遊泳など、月への飛行で欠かせない実験を地球周回軌道でこなしていきます。そこでの人間同士の葛藤やプライベートな会話などは、やはり直に聞いた者の強みですね、とてもリアルです。私が好きなのは、ジムとマリリン夫婦の会話です。クリスマス休暇にアカプルコに行くことをとても楽しみにしていたマリリンにジムが「残念だが、旅行はだめになった」と告げるシーン。どうして?どこに行くつもりなの?と問い詰めるマリリンにジムは「信じられるか? 月だよ」と答えるのです。
 月着陸船の製作が難航してスケジュールに遅れが出そうなとき、だからこそアポロ8号は月に向かうべきだ、という提案がなされました。着陸船抜きでも月を有人周回したら、有意義な実験ができるではないか、と。リスクはチャンス、です。もちろんこの初飛行にはリスクは多くつきまとうのですが。シミュレーターで、想定できる限りの緊急事態の訓練がおこなわれます。そんなことがあり得るのか、と言いたくなるような「緊急事態」も含まれていましたが、それでも十分ではなかったことはのちの13号で証明されてしまいました。もっともこれは別のお話です。8号のクルーが出発前に“隔離”されているとき、特別なゲストが訪問します。リンドバーグ夫妻です。この会食シーンも印象的です。“ヒーロー”ではなくて、飛行家同士の楽しい会話が繰り広げられたのです。月に向かう途中、“試練”が宇宙飛行士たちを襲います。といっても致命的なものではありません。無重力酔いや廃棄物処理システム(要は「トイレ」)の不調です。といっても十分不愉快なものなのですが。
 興味深いのは、当時から「アポロの月飛行なんか政府のでっち上げだ」という陰謀論者がいたことです。彼らが、遠ざかっていく地球の映像(テレビ中継がおこなわれました)や月の裏側の映像(や「地球の出」のカラー写真)についてどのように「陰謀」を言ったのかは紹介されていませんが(60年代ですからね、CGなんかありません)。
 「地球を発見」した8号が月から無事帰還し、「60年代に月着陸」という“スケジュール”は守られそうな雰囲気になってきました。やっと完成した月着陸船を含めて、9号では地球周回軌道で最終全体チェック、10号では月周回軌道で予行演習、そして11号で本番、というスケジュールです。ものすごくリスキーでタイトなスケジュールですけれど。そして「月着陸以外」のすべてがテストされ、とうとう11号の「テスト飛行」が始まります。不安定な着陸船で着陸(実際には制御された墜落)が本当にできるか、月面で何が起きるか、は実際に“テスト”してみないとわからないのです。船長はスコットランド人(ハイランダー)気質を濃厚に持っているニール・アームストロング。世間ではこの「船長」にだけ注目が集まりましたが、著者は3人のクルーそれぞれに独自の“物語”があり、それが組み合わさることで「アポロ11号」が完成していたことを淡々と示します。
 11号がもたらした月の砂や石の標本から、地質学者は「月の歴史」を知るための次の予定を立てます。月を知ることで地球を知ることの助けが得られそうなのです。そして、アポロ12号が打ちあげられます。サターンロケットが点火されて上昇を始めた直後、宇宙船内では電気系統に関するほとんどすべての警告灯が点灯します。燃料電池のラインが切れたのです。24歳の飛行管制官ジョン・アーロンは冷静に一つのスイッチを補助装置に切り替えさせます。とりあえずそれで打ち上げは継続され、第一段ロケットが切り離されてから燃料電池をすべてリセットすることで、すべては正常に復しました。あとになってわかったことですが、離陸直後の1分間の間にサターンロケットは「巨大な避雷針」として2回雷に打たれ、そのために電気系統が不調になっていたのでした。まったく、いろんなことが起きるものです。12号のミッションは、11号よりハードルが上がっていました。着陸するだけでは駄目で、ピンポイントで狙ったところに着陸することが求められます。31箇月前に着陸した無人探査機サーヴェイヤー3号がその目標です。コンラッドとビーンは、どんぴしゃの地点に着陸を成功させます。2人は地球で地質学者から訓練を受けていました。隕石がぶつかってできたクレーターは、地殻の成分が周囲にまき散らされていて、いわば出来合いの発掘現場です。ですから上手くサンプルを集めたら月について非常に多くのことがわかるのです。さらに31箇月の間過酷な環境にさらされていたサーヴェイヤー3号からもサンプルを切り取ります。
 地球に帰還して「12号の物語」は終わったかのように見えます。しかしドラマは続きます。強い友情に結ばれた3人ですが、月に降りたコンラッドとビーン、そして降りなかったゴードンは「これからのこと」について、それぞれの決断をするのです。


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