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2014年11月21日21:33

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人呼んでフライング解散

 今回の国会解散で、解散の詔書が読まれている途中で「バンザイ」のフライングがありました。詔書が最後まで読まれるのを待ちきれませんか? そんなに選挙運動に早く駆けつけたいんですかねえ。「バンザイ」で邪魔された詔書を気を取り直して最後まで読み終えた議長が「バンザイはここでしてください」と自民党席の方向を見ながら憮然とした様子で“指導”をしているのが、印象的でした。しかし、なんて品の無い光景だことかしら。

【ただいま読書中】『ヒトラー暗殺計画とスパイ戦争』ジョン・H・ウォラー 著、 今泉菊雄 訳、 鳥影社、2005年、2800円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4886298834/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4886298834&link_code=as3&tag=m0kada-22
 第一次世界大戦中、ドイツ艦ドレスデンの艦長をしていたカナリス中尉は、英国に拿捕されることを避けるために自沈、チリの捕虜収容所から脱走し、スペインに潜入してスパイとして活動しました。目的は北アフリカの部族に潜入し宗主国フランスに対する反乱を起こさせること。しかしフランス(やイギリス)から追われたカナリスは、からくもUボートで脱出します。戦後カナリスは一時政治に関わりますが結局海軍復興に奔走します。ベルサイユ条約に違反して秘密裏に造船所を確保しようとしたのです。それが暴露されスキャンダルの主人公となったカナリスは、スペインに送られてそこでほとぼりを冷ますことになります。ここで作った人脈が、のちに第二次世界大戦で大きな役割を果たすことになります(たとえばこのときカナリスの親友となったフランコはのちのスペイン内乱で指導者となり、カナリスの協力でドイツの軍事力を借り、しかもカナリスのアドバイスによってヒトラーに逆らう動きをします。そしてそのおかげでジブラルタルは英国領のまま“保存”されました)。
 1935年カナリス中将はドイツ国防軍諜報部(アプヴェール)の最高責任者に任命されます。御しやすい人間とみられての人事でしたが、実はこれはナチスの大失態でした。カナリスはそれから約10年間、ヒトラーに対する隠れた反逆者でありかつドイツ国内のレジスタンスの庇護者として活動したのです。
 ベルサイユ条約から“排除”されたドイツとソ連は、ひそかに協力関係を築きました。たとえばソ連領内にドイツは空軍の操縦士訓練施設や戦車学校を作りました。ソ連もそれで近代戦の戦い方を学ぶことができます。ヒトラーとスターリンには個人的なつながりもあり、ヒトラーはスパイが入手したソ連内の陰謀をスターリンに通報します。これによって赤軍内で粛清が行われますが、ヒトラーとしてはスターリンが暗殺されるよりも生きていてくれ(て、さらにドイツに感謝をもっていてくれ)たら、東部戦線は安泰でヨーロッパを蹂躙する時間が稼げる、という計算からの行動でした。赤軍の指揮系統は崩壊し(高級将校3万5千人が処刑されました)、ドイツに対する「ソ連からの抑止力」が期待できなくなった英仏は気が弱くなります。
 本書は700頁近い大著ですが、実は上記のここまでのまとめはまだその1割くらいまでしか読んでいない時点でのものです。ここから第二次世界大戦“前夜”となり、カナリスの長い長い戦いが始まることになるのです。どうして彼がそのような行動をしたのか、どうしてそれが何年もばれずにすんだのか、連合軍側の諜報部はカナリスの行動を知っていたのか、知っていたらそれをどのように利用したのか……私は首を振りながら、残りの頁の厚みを眺めます。
 勅裁的で攻撃的なスターリンと違ってヒトラーは陰険で攻撃的な手段で軍の掌握を図りました。反抗的な将軍にスキャンダルをでっち上げて引退させ、後釜に自分の言うことを聞く人間を据え付ける、という手法です。さらに自分の子飼いの新しい軍隊SSを創設してそちらを優遇します。これが(古い)軍幹部たちの憤激を呼びます。そして、軍の内部にレジスタンス組織ができてしまったのでした。これは戦争状態の国としては異様な事態です。カナリスはアプヴェール自体を反ヒトラーの組織として掌握しました。ただしカナリスはヒトラー暗殺は考えていませんでした。合法的に裁判にかけるための証拠を集めていました。しかし、暗殺を考える一派もいて渡英してイギリス政府の協力を求めて拒否されたりしています。そして、チェコ問題での英仏の弱腰が、ドイツ国防軍のクーデターの腰も折ってしまいました。
 本書には、9月30日に読書した『英国二重スパイ・システム ──ノルマンディー上陸を支えた欺瞞作戦』(ベン・マッキンタイアー)の内容も登場します。ウィンザー公やヘスの謎の行動や、ヒトラーが示したもっと謎な行動(ダンケルク手前で部隊をストップさせたこと、など)についても頁が大きく割かれます。書きたいことがありすぎて、著者は困っている様子です。ただ著者がずっと注目しているのは、「正しい情報が得られるかどうか」よりも「情報をどう分析してそれをもとにどう行動するかの決定ができたかどうか」の方が重大な結果をもたらす、という現象です。たとえばバルバロサ作戦(ナチスドイツのソ連侵攻作戦)の情報はソ連にもたらされていました。問題はスターリンがそれに何の反応もしなかったことです。イギリスからもたらされた「ドイツ侵攻が間近」という情報をスターリンは、英米は独ソを戦わせてそれから大陸に上陸する気だ、と考えました。チャーチルの陰謀だ、と。スターリンはヒトラーを二正面作戦をするほど愚かではない、と“信用”していたのです。
 そもそも「これは勝てるぞ、戦争を始めよう」と開戦したら、最初の予定通りに戦局が展開しない場合には、「データが間違っていた」場合よりは、「データの分析」と「決断」が間違っていた場合の方が多い、というのが著者の判断です。その点でデータも判断も徹頭徹尾丸っきり間違っていたのがチェンバレン、データは正しかったが判断が丸っきり間違っていたのがスターリン、精神病的にでたらめにやってたまに人の意表を突くことで上手く当てたのがヒトラー、データは不十分だったけれど直感を活かすことでまあまあ上手くやったのがチャーチル、といった感じです。それにしても著者は、思い込みに走ったり明らかに愚かな判断や行動をする人間に対しては容赦なく“断罪”をしています。とっても辛辣な口調です。
 ヒトラーはソ連侵攻の前にまずバルカン半島を固めようとします。それに逆らったのがユーゴスラビア(特にセルビア)。カナリスはひそかに「無防備都市」宣言をするようにユーゴの新政権に勧告しますが、結局ドイツ軍の攻撃で1万7千の住民が殺されます。ただその死は“無駄”ではありませんでした。この攻撃によってソ連侵攻は1箇月遅れたのですが、そのためドイツ軍はロシアの冬将軍に追いつかれてしまったのです。カナリス提督はスペインには中立化を勧めます。スイスに置いた工作員を通じて西側に機密を漏らします。しかし“役に立たない”諜報部の地位はドイツ国内で低下します。危うし、カナリス。
 ただ、カナリスの地位の低下が自分の利益になるはずのヒムラーは、奇妙に弱腰です。ヒムラーにはヒムラーの内的動機がいろいろあったのかもしれません。スイスやスペインなどを動き回るカナリスを、イギリス諜報部は暗殺するチャンスが何度もありました。しかしイギリスは動きません。むしろ暗殺の動きを抑制します。おそらく上の方ではカナリスの動きが連合国の利益に適うと判断していたのでしょう。ドイツ軍の窮状をあけすけに語ったカナリスにヒトラーは激怒し、ついにカナリスは失職します。しかし不思議なことに「罰」はありませんでした。ドイツ国防軍諜報部はヒムラーの組織(SD)と合体させられますが、レジスタンス派は温存されました。ノルマンディー上陸作戦が成功するかどうかの情報欺瞞操作にカナリスは動きます。英国の「ダブル・クロス作戦」との“共同作戦”です。ただ、連合国からみたらドイツ国内のレジスタンス派は「信用できない相手」でした。謀略か変節漢か二股かけた卑怯者と見えたのです。ドイツレジスタンス派についてほぼ正確に理解していたのは、アメリカではOSSのダレスだけでした。ダレスは政府とドイツの板挟みになりながら、救えるものは救おうとします。
 ヒトラー暗殺計画は、驚くほど多くのものが立案・計画・実行されましたが、さらに驚くことに、ことごとく失敗しました。そして、失敗の代償は、少しでも怪しいと思われた者に対する容赦ない死刑宣告でした。容疑者の家族でさえ殺されました。そして、44年7月20日の暗殺未遂事件によって、(本当は直接の関係はないのに)カナリスも逮捕されます。以前から“反逆者”として目をつけられていたからでしょうが、だったらなぜもっと以前に逮捕されなかったのか、が不思議です。
 本書を読んでいて、私は「愛国者」とは何だろう、と思います。カナリスは「ドイツ」を愛してはいましたが「ヒトラー」は愛していませんでした。むしろヒトラーのことをドイツを害するものと見ていました。実際にヒトラーはドイツ(と世界)にとんでもない損害をもたらしました。この場合、カナリスは「愛国者」なのでしょうか?それとも非国民?
 本書にはときどき「バチカン」も登場します。おそらく機密文書が公開されることはないでしょうが、バチカンが第二次世界大戦で諜報面や金融面でどのような機能を果たしたのかにも、私は興味を持っています


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