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2024年03月26日06:26

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本棚616『女の民俗誌』宮本常一(岩波現代文庫)

 「その話を聞いているとみな実に苦労している。人生をのどかにすごしてきた人はいない。ただ苦を苦にしないといってはいいすぎであろうが、苦にまけなかったのである。」

 全国各地を遍く歩いて人びとの生活、暮らしを渉猟した民俗学者宮本常一が、女性に焦点を当てた一冊。女工哀史のような悲話も多く語られるが、女性のたくましさやしなやかさ、カラリとした明るさも感じられる。映画『もののけ姫』で、たたら場が焼け落ち、何もかもおしまいだとうなだれる夫に対して、「生きてりゃなんとかなる。」と言うおトキさんの言葉に、絶望の淵でも光を求められる女性の力を感じたことをふと思い出した。

 若い娘たちが春先の夕方、突然村を抜け出して伊勢参宮に行く解放的な旅があったという話や、武家とは違って日本の民間の習俗では女性が家督を継ぐ場合もよく見られたという話など、新鮮に感じられた。
 対馬の染織の話では、涼やかな夜風が吹く中、月明かりを浴びながら、海辺に糸車を出して一晩中糸を紡ぎ、暑い昼は寝て暮らすという、どこまでも自由で、夢幻的な、桃源郷のような生活が少し前の日本にあったことに驚き、嬉しくなる。
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