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2023年05月31日12:48

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本棚563『中国名言集 一日一言』井波律子(岩波現代文庫)

 詩文や史書、随筆、俗諺など、中国の悠久の歴史の中で紡がれた人間の叡智、幽幻な世界観を表す言葉たちが一日一言という形で収められている。杜甫や李白といった著名な詩人から、「人生 別離足(おお)し」の詩一篇のみで永遠に記憶されることになった于武陵まで、幅広い人びとの言葉が記されている。

 漢文は、簡潔な言葉ゆえに時に意味を捉えにくい時もあるけれど、著者の解説がさり気なく補ってくれる。「せせらぎの音が耳いっぱいに響き、涼気が顔一面に漂ってくる。」(『耳に満つ潺湲(せんかん) 面に満つ涼』)、「雄大な風景を巨視的に歌うこの詩には、長い歴史と広大な空間が凝縮されている。」(『黄河 海に入りて流る』)のように詩の情景を鮮やかに色づけるものもあれば、司馬遷の『天道 是か非か』の解説では、この短い言葉に潜む、運命の非情さへの静かな悲憤を浮き彫りにする。

「彼らの潔癖な生き方を高く評価する司馬遷は、これほど高徳の人を救いえない天に対し、「是か非か」と強い調子で疑問を投げかけているのである。」

 このように366もの名言を通して見てみると、日本独自の格言·俗諺だと思っていたものが実は中国由来のものであったりして、日本文化に中国の文化が深く染みわたり、影響してきたことがわかる。以前、『坂の上の雲』のドラマの中で、日清戦争の頃、文化的に近しいお隣の国である中国となぜ争わなくてはならないのだろういった趣旨の台詞があったことをふと思い出した。
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