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2020年12月31日11:52

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ヴァーチャル・リアリティ(仮想現実)

 最近、「ヴァーチャル・リアリティ」という言葉をよく耳にする。特殊なゴーグルをつけると、現実にはそこに無いものをまるで本当にあるかの如く見えるらしい。本物ではないが本物らしく見えるということで「仮想現実」という訳語が当てられている。バイノーラル法式で録音された音をヘッドホンで聴くのは、音のヴァーチャル・リアリティと言ってよいだろう。それと、物を触ったときの感触を得られるようなグローブもあるらしい。眼耳鼻舌身意のうちの眼耳身が揃うとよりリアリティは増す。
 この技術を福島原発の廃炉作業に応用できないだろうか。原子炉内は放射線量が高くて人間はとても入れないが、カメラと高性能なマジックハンドを持ったロボットがその中で作業するのである。オペレーターはロボットのカメラとつながったゴーグルをして、マジックハンドと連動するグローブとギプスを手と腕につける。そうすると、オペレーターはさも原子炉内に居るかのような臨場感を得る。マジックハンドはオペレーターの腕と手の動きと連動しており、ものに触れたときはセンサーがその手ごたえをオペレーターに伝える。
 そうなるとオペレーターはまるで自分が原子炉内に入り作業しているような現実感を得るはずである。ここまで行くと、これを仮想現実と呼んでもよいものだろうか? 彼が得ている現実感に対応する現実があるという意味では紛れもなく彼は現実の中にいるのではないだろうか? 「自分の手」と言っても切断すれば、それは自分のものとは別の物体である。いわばよく出来たマジックハンドを肩につけているようなものである。オペレーターはグローブとギプスをはめたことにより、もともとの肉でできたマジックハンドを原子炉内のロボットのマジックハンドまで延長しただけである。視覚についても同様のことが言える。眼の位置を原子炉内に変えただけである。
 よくよく考えてみれば、もともと私たちは物自体にじかに触れているわけではない。世界はもともと無色無音である。電磁波が私達に色を見せ、空気振動が音を聞かせると説明されているが、自然科学によればそれらの色や音は我々の感覚器官が作り出したものだということになる。だとすれば初めからすべては仮想現実だと言えなくもない。
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