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2019年10月01日12:02

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電車の中で‥‥

 昨日のこと、私は根岸線で港南台から横浜に向かっていた。途中の石川町駅で、同じ制服を着た小学生が十人程乗り込んできた。その中に小柄で一目で低学年であると分かる女の子と男の子が連れ立って私の座っている側にやってきた。二人共とても可愛いが、女の子はきりっとして意志が強そうで、男の子は優しそうでおっとりした感じだ。私の左隣には一つ空席があって、女の子はそこに自分のランドセルをドカッと置き、中から筆箱と手製の分厚いノートを取り出した。そして、ランドセルを背もたれにもたせかけて、自分はそこに座り、筆箱を男の子に差し出すと、男の子はごく自然にそれを受け取り、右手にそれをもったまま左手でつり革を持って立っている。ここまで二人は無言のままやりとりしている。このペアは女の子がリーダーらしい。

 女の子は座席に座るとすぐさまノートを開いて、一心不乱に鉛筆でなにかを書き始めだした。感心するのは、電車に乗り込んでからの彼女の動作に全然無駄がないということだ。とても集中力のある子だということがうかがえる。私は興味津々で、横目でそのノートを覗き込んだ。「だい11しょう デートにさそわれる」という文字が目に飛び込んできた。

 「私はあなたの本当のきもちを知りたいの。」
 「クーリエがあのとき私に言ったことをはっきりとおぼえているわ。」
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 瞬く間に、そのページを埋めてしまったと思ったら、次のページから別の章が始まる。

 「だい12しょう ひみつきち」

 ますます私の好奇心は掻き立てられたが、横浜駅に着いてしまった。降り際に、どうしてもその子に声を掛けたくなって、「君たち何年生?」と聞いてみた。二人が声をそろえて、「二年生です。」とはっきり答える。私は女の子に「それ小説なの?」と訊ねると、「そうです。」という答えが返ってきた。私はなんとか自分の感動をその子に伝えたいと思ったのだが、「すごいね君」というありきたりの言葉を返して、電車を降りた。 なんか今日はすごいもん見た、という感じだ。長生きするのも悪くはないなと思った。
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