mixiユーザー(id:235184)

2018年12月27日11:07

179 view

風が吹くと

 桶屋が儲かる、と私は言いたくなりますが、最近は木製の「桶」を使ってましたっけ? 身近に桶屋さんがありましたっけ?

【ただいま読書中】『風の又三郎』宮沢賢治 著、 田原田鶴子 絵、偕成社、2007年、1800円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4039720407/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4039720407&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=3e4dddbf51e3afb2612f275460609f42
 夏休み明けの9月1日、子供たちが登校すると、まるで外国人のような見慣れぬ子供が一人来ていました。赤毛で洋服を着て靴を履いているのです。ここで現代の人は、子供たちが受けた衝撃の意味があまりわからないでしょう。赤毛はともかく、洋服と靴は戦前の尋常小学校の多くでは「異常な恰好」だったのです。私の父親も、尋常小学校に普段は和服(つんつるてん)で行っていましたが、上海で成功した親戚から送られてきた洋服を着せられて革靴を履かされて登校したら皆にひどくからかわれてとても嫌な思いだった、という思い出を持っています。
 転校生を巡って大騒ぎをする子供たち、それを鎮めようとする教師。非常に生き生きとした場面なのですが、そこで「言葉の対比」も印象的です。子供たちは方言を使っています。しかし教師は共通語です。「岩手に進出してきた“東京”」がそこに見えますが、同時に私は「日本に進出してきた欧米文化」の影響も感じます。当時の日本人は「どんどん身近になる欧米文化」についてある種の実感を持っていたはず。それが本作には二重写しのようになっているのです。
 「又三郎」は、風のようにやって来て、風と戯れるように皆と遊び、そして風のように去って行きました。読み返してみて改めて「たった2週間足らずの物語」だったんだなあ、とその短さとその濃密さに私は感銘を受けます。たとえばランサムの「夏休みの冒険シリーズ」に日本の作品で対抗しようとしたら、本作がその筆頭候補かな。


1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2018年12月>
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031