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2018年12月09日08:10

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聞く耳は?

 秋篠宮は宮内庁を「聞く耳を持たない」と評しましたが、沖縄県民は日本政府に対して同じ感想を持っているのではないでしょうか。

【ただいま読書中】『米軍基地がやってきたこと』デイヴィッド・ヴァイン 著、 西村金一 監修、市中芳江・露久保由美子・手嶋由美子 訳、 原書房、2016年、2800円(税別)
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 世界の約70ヶ国に米軍基地は800近く存在し(ドイツに174、日本に113、韓国に83)、数十万人の米兵が駐留しています(文官や家族を含めるとおそらく50万人以上)。それは「世界平和のために当然のこと」とされ、そのことについて(基地周辺の住民以外は)あまり深く考えられたことはありません。例外は2009年エクアドルのコレア大統領で、米軍基地の租借契約更新を拒否して、契約更新に同意する条件は「マイアミにエクアドルの基地を置かせてもらうこと」。「他の国の土地に外国兵を置いていいのなら、当然、エクアドルがアメリカに基地を置いてもいいはずだ」と皮肉もくっついていました。
 基地は様々な「損失」をアメリカにもたらしています。経済的損失は(著者の試算では)最低でも年間718億ドル。さらに、兵士たちが国内ではなくて国外で消費する損失、人的損失、性的暴行事件の温床(米軍の女性兵士の1/3が性的暴行を受けているそうですが、そのかなりの数が在外基地で発生していると推定されてます)、イタリアではマフィアと癒着、イスラムの地に米軍基地があることを利用しての反米宣伝(アルカイダはその宣伝で人々を取り込みました)。さらに「在外米軍基地がアメリカの安全や地球の平和を守っている」という「大前提」が正しいという保証がないことも問題です。
 著者は6年間かけて世界各地の60箇所以上の米軍基地を調査して回りました。多くは関係者は友好的でしたが,中には半分スパイ扱いされたこともあるそうです。さらに「基地の外」でも詳しい調査を行っていますが、それは「基地は本当に必要なのか、何の役に立っているのか」という疑問を明らかにするためです。
 「基地国家」アメリカは、1940年9月2日にイギリスと「駆逐艦50隻を提供する代わりに、各地のイギリス植民地に基地を置く権利を得る」協定を結んだことで始まりました。ただ、実際には、開拓時代に“国外(アメリカン・ネイティブの土地)"に次々要塞や軍の駐屯地を建設したところまで遡れるのかもしれません。軍によって先住民を西に追いやるとそこに開拓者が入ってそこは「国内」になり、するとまた「国外」に砦や駐屯地を次々建設して、を繰り返してアメリカは西に膨張し続けました。太平洋岸に到達すると「砦」はアジアに向かいます。ペリー提督は琉球王国と日本に基地を作ろうとしました(実際に琉球には1年間ですが米軍基地ができています)。1867年にロシアからアラスカを購入するとすぐ4つの基地を作り、さらにサモア王国とハワイ王国で軍港の租借協定を結び、1898年にハワイ、99年にサモアを併合すると海軍基地を建設しました。1903年にはキューバのグアンタナモの永久租借協定を締結し、ここを拠点にプエリトリコの侵略を開始しました。1903年独立したばかりのパナマもアメリカから(のちにパナマ運河が建設される)帯状の地帯に対するアメリカの支配権を認める協定を押しつけられます。この協定は運河地帯以外にも土地の収用や基地建設を認めるもので、最終的にパナマは14の米軍基地を受け入れ、1856年から1989年までの間に米軍の軍事介入を24回経験することになります。
 ドイツでは、終戦直後(特に最初の年)占領軍とドイツ国民の間で緊張が高まりました。特に米軍兵士の「解放」(地元民からの接収(つまりは盗難))が悪評でした。その中でも「ブロンド女性の解放(つまりは強姦)」が。もちろん兵士は「合意の上」「相手が言い寄ってきた」と主張するのですが。そういえば日本でも占領軍がいろんなものを「解放」して本国に持ち帰っています。「これはまずい」ということで1945年に米陸軍は「ドイツ駐留の兵士に家族の帯同を認める」という革新的な決定を下します。家族のためにさらに土地が必要になり、それがまた新たな緊張を生みましたが、ともかく基地は拡張され、家族のための施設(ショッピングモール、学校、病院、ボウリング場、ゴルフ場など)が作られ、大規模な基地の中は「リトルアメリカ」となりました。また、小規模な基地は「拠点」と呼ばれるようになり、アメリカ政府はそれらを「基地」とは認めない傾向が強くなりました。これらの「基地」は世界中にネットワークを形成していますが、その目的は「軍事」だけではなくて「政治」や「経済」も見据えています。アメリカの「世界戦略」は基地ネットワークをフルに使うことで成立しているようです(政府も著者もそのことを明言していませんが)。
 ビキニ島の住民が強制移住でひどい目に遭ったのは別の本でも読みましたが、他の島でも米軍は阿漕な手段で強制移住を行っています。「開拓時代」に「インディアン」に対して行ったのとそれほど変わらない態度です。誤魔化しはずっと洗練されていますが。グアムでは島の60%を接収しました(現在では30%まで“減少"しています)。沖縄では耕地の40%を接収し25万人を立ち退かせています。クレブラ(プエリトリコの隣の島)は島の1/3と海岸線のすべてが海軍に接収され、人口は4000から580に減りました(海軍は「住民は自発的に引っ越した」と主張しているはずです)。デンマークではイヌイットが強制移住をさせられました。そういったことは悲劇なのですが、(当人以外には)世界で誰も気にしていません(皆さん、気にしたことがあります?)。
 人権蹂躙が平気な軍は、独裁者とも(基地維持のためなら)平気で手を組みます。その実例が本書にありますが、「アメリカの理想は?」と私は呟きたくなります。ベトナム、イラク、ホンジュラスなどアメリカと手を組む独裁政権はすぐにどんどん腐敗しましたが、もしかしたら最初から腐敗しているところとアメリカが好んで手を組んでいただけなのかもしれません。さらに、コントラやマフィアとも手を組んでいるのですから、これは「世界平和」のためには困ったことを米軍はしている、と言えそうです。
 日本人としては「第一四章 沖縄に海兵隊は必要か」が特に興味を持てる章でした。第二次世界大戦からの歴史を概観し、米高官の沖縄人に対する侮蔑のことばを唖然としながら聞いたことをそのまま記録していますが、その侮蔑がアメリカ人だけではなくて日本人も共有していることに私はがっかりします。取りあえずこの章にある金の動き(と費用対効果の悪さ)、犯罪のリスト、など具体的なことを知ったら、少しは真っ当な議論ができるかもしれないんですけどね。
 「基地の経済効果」がよくわかるのは、「基地が閉鎖されたとき」です。閉鎖される前には「地元経済が打撃を受けること」を心配する人が多いのですが、実際にはどうでしょう? 本書にはドイツの例(91〜95年に、10万エーカーの土地をドイツに返し、20万人の隊員を引き揚げ、米軍の年間支出を30億ドル減少させた)が検討されています。局所的には「深刻な打撃」を受けた地域もありますが、ドイツ全体としては影響はなし、でした。2003〜07年にはドイツ軍の基地閉鎖についての調査も行われましたが、これも「基地閉鎖のマイナス影響は存在しなかった」が結論だそうです。すると、沖縄でも基地を段階的に縮小していったら、沖縄には基地に代わる雇用が生まれ、日本政府とアメリカ政府は支出が減る、という“三方一両得"が発生するんじゃないです?


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