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2018年02月19日21:48

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「ヴォルテール、ただいま参上!」

読書日記
「ヴォルテール、ただいま参上!」
ハンス=ヨアヒム・シェートリヒ
 作

18世紀の啓蒙思想家ヴォルテールとプロイセンの国王フリードリヒ二世の長年に渡る交流と反発を事実に基づいて順に構成した史書的創作。17歳年長のヴォルテールを崇拝する若きフリードリヒの手紙から始まって、ヴォルテールと才媛エミリー・ド・シャトレとの生活、プロイセンでのヴォルテールの数々の困難とフリードリヒとの決裂までを資料そのままに再現。

本の帯には爆笑の連続とあるが、まったくそんなことはない。ヴォルテールを偉大な啓蒙思想家ゆえに学者然とした紳士的な人物と思っていれば、その実際の行動の落差に大笑いするかもしれないが、ヴォルテールが嫌味で辛辣な批評家で金に執着する一筋縄ではいかない曲者であることを知っていれば、この作品で描かれているのはいつものヴォルテールそのままである。

フリードリヒのほうは文化芸術を愛する青年で、最初は王位継承を嫌がっていたが、国王となって権力を手にするやいなや戦争による領土拡張と大量殺人をくりかえすのは人の性(さが)のようなもので、これくらいの文武両道は珍しくはなかろう。

フリードリヒに尊敬されて人の下にも置かない扱いをされているヴォルテールを、「虎の前足で撫でられているようなもの」とした表現がおもしろかった。
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